会社は、健康診断の実施を徹底して従業員の健康に配慮するとともに、感染症への対応についても検討しておく必要がある。
感染症については、地域特有のもの(マラリア、デング熱等)があるため、まず、予防接種や予防薬の付与等を検討しなければならない。
さらに、予防という意味では、厚生労働省、外務省ホームページ等を通じて、感染症に関する情報やガイドラインを事前に入手しておくことも必要となる。世界的に流行している感染症(新型インフルエンザ等)に対して、WHO(世界保健機関)が宣言するフェーズ情報や国内の対応段階もそのひとつといえるだろう。
会社の感染症への予防対策としては、労働安全衛生法の遵守はもちろんのこと、法定を上回る対応を検討することが望まれる。
たとえば、社内だけで対応するのではなく、管轄の保健所や産業医をはじめとする医療機関等の指示を仰ぐことも重要になる。各感染症の潜伏期間や発症率、ワクチンの付与回数など、医学的な見地から具体的なアドバイスを受けられるからである。
感染症は集団感染の危険があるため、感染症予防や対策を規定した法律として、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症予防法」という)がある。
感染症予防法第6条では、感染症の種類を次のように分類している。
- 第1類~第5類感染症
- 新型インフルエンザ等感染症
- 指定感染症と新感染症
このうちの第1類~第3類や新型インフルエンザ等感染症については、集団感染の危険性が高いことから、感染症予防法第18条で都道府県知事の通知による就業制限を定めている。
また、海外から帰国した従業員については、「検疫法」に基づいて隔離措置がとられることもある。
以上のように、感染症への対応にあたっては、労働安全衛生法だけでなく、他の法律との関係にも目を配りながら対応していく必要がある。
注意点!
会社は、集団感染を防ぐため、感染症に罹患した従業員に自宅待機を命じることがある。この場合の賃金の取扱いには注意が必要である。
まず、あくまで「予防対策」であれば、会社の自主的な判断によるものなので、労働基準法第26条に基づき、休業手当の支払いが必要となる。
一方、感染症予防法第18条や労働安全衛生法第68条では、感染症についての就業制限規定を設けている。この規定に該当する場合、会社の自主的な判断による自宅待機ではないため、休業手当の支払義務は生じない。
以上のことから、原則として、法律や公的機関等の指導といった根拠がない限り、会社が従業員を休ませる場合には、休業手当の支払義務が生じる。
新型コロナウイルス感染症においては、自宅待機期間中の休業手当の支払の要否が問題になった。このようなケースに直面する際は、労基署に確認するなどして適切な対応を心がけたい。
感染症対策 |
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労働安全衛生法だけではなく、他の関係法律にも注意する! |
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2019年10月末現在の関係法令等に基づいています。