働き方改革関連法の成立により残業時間の上限が法律で明示されましたが、厚生労働省は、原則の月45時間を超えて労働者に残業をさせる場合、企業に健康確保措置を義務付ける方針です。
36協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置付けたうえで、この記載がない協定については労働基準監督署が受け付けない予定です。
また、当該健康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当としています。
健康確保措置の内容については具体的には労使の協議にゆだねられますが、現在、検討されている「望ましい内容」としては、以下のようなものが挙げられます。
●代償休日または特別な休暇の付与 ●健康診断の実施 ●連続した年次有給休暇の取得促進 ●心とからだの相談窓口の設置 ●配置転換 ●産業医の助言指導に基づく保健指導
これらは、労働法令で企画業務型裁量労働制の対象者に講ずる健康確保措置として規定されているものですが、基本的にはこれらを中心に対策が検討される予定です。
また、これらに加えて、
●長時間労働を行なった場合の面接指導 ●深夜業の回数の制限 ●勤務間インターバル
などについても検討することが適当とされています。
このうち「勤務間インターバル」とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻のあいだに一定の休息時間を確保するものです。
労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、その普及・促進が期待されています。
このほか、同指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨を規定するとともに、休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない規定についても盛り込まれる予定です。
行政官庁は、この指針に関して使用者や労働組合等に対し、必要な助言・指導を行なえるようにすることが適当としています。
注目したい法改正の動向
総務省の有識者懇談会は、このほど、電波制度改革の報告書案をまとめました。
それによると、現在の携帯電話に比べ1000倍以上の速度を持つ通信規格の実用化を目指し、2040年に関連産業の市場規模を112兆円(2015年時点の約3倍)に拡大させる構想が盛り込まれています。
また、効率的な活用ができていない事業者にはその部分の電波の返上を求めることができる仕組みの創設を提言しています。
一方、政府が求めていた周波数割当てのオークション方式は導入を見送るとしていますが、今後も紆余曲折が予想されます。
総務省では報告書の正式決定を受けて、来年の通常国会に電波法改正案を提出する方針です。
厚生労働省は、スマートフォンなどを使って薬剤師が離れた場所から薬の飲み方等を指導するオンライン服薬指導について、現在認められている国家戦略特区(愛知県など3区域)だけでなく全国で公的医療保険を適用することを検討しています。
早ければ、来年の通常国会に医薬品医療機器法の改正案を提出する予定です。
厚生労働省の有識者検討会は、副業・兼業による労働時間の管理について議論を始めました。
現行の労働基準法では、本業と副業・兼業先の労働時間は通算されることになっています。複数の事業所で働いて1日の法定労働時間を超えた場合は、あとから労働契約を締結した事業場で割増賃金の支払いが生じます。この点が、副業・兼業制度導入の障壁になっているとの指摘があったことを受けての動きです。