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[第2回] よい総務は会社のすべてを知っている!

2018年1月19日更新

元総務部長が語る「総務の仕事とは」

[第2回] よい総務は会社のすべてを知っている!

[河西知一氏(特定社会保険労務士)]

総務の仕事に「正解」はない

総務の仕事というのは、じつに変化に富み、おもしろい仕事です。なぜならば、「正解のない課題」に取り組む仕事だからです。

総務にとって最も重要な仕事は、情報管理の司令塔となることです(「よい総務」がよい会社を創る!参照)。流すべき情報とそうでない情報を取捨選択し、集まってくる情報の中から問題の芽を見つけ、あるときは警鐘を鳴らし、あるときは課題解決に向けた提案をする——。

そうした仕事には、「これが正解」というものはありません。100の会社があれば100のルールがあり、そこには100とおりの「解」があります。

もし、「総務の仕事は、ルーティンなもの」「創造性がない、面白みのない仕事」と思い込んでいる総務担当者がいるとしたら、もったいない話です。
いまからでも遅くありません。総務担当者としての能力を磨き、経営者を支え、会社の業績向上に貢献する“総務の仕事の醍醐味”を味わっていただきたいと思います。

そのために、総務担当者が日頃から心がけておくべきことは何でしょうか。

総務の仕事は守備範囲がとても広いので、欲をいえばきりがありません。ですが、特に大事なのは次の3つだと考えます。
  1. 会社の現状を把握する
  2. 世の中の流れに注視する
  3. 会社を守るための法律知識を身につける

会社の現状を把握し、改善点を探す

総務に配属されたその日から、総務担当者は「会社の現状を知る」努力を惜しまないでいただきたいと思います。「会社の現状を知る」とは、すなわち
・ハード(建物、設備、備品など)を確認する
・ソフト(職場の雰囲気、残業の実態など)を知る
・全体像(組織図、実際の仕事の流れ)を把握する
ということです。

ハードを確認するとは、「見る」ということです。そして「さわって」みます。
建物の壁や階段、床や外壁、そして給湯器や冷暖房などの設備、文房具等の備品に至るまで、手でさわれる近さまで寄って、見て、実際にさわってみます。工場や営業所があるなら、ぜひそこにも足を運んでください。
そして、建物に傷みはないか、危ない段差はないか、備品の補充はスムーズか、等々

「何か問題はないか?」「もっといい方法はないか?」

という目で、観察します。

ソフトを知るには、会社のあらゆる部門のフロアに赴き、職場の様子を観察します。残業が多い部署があれば、人の配置は適正か、仕事は効率的に処理されているか、検討する必要があります。元気のない職場があれば、上司のパワハラや問題社員の存在を疑う必要があるかも知れません。

そして総務担当者は、常に「全体にとって最適であるか?」を基準に考えることが大事です。そのためには、会社の組織図を頭に入れることはもちろん、仕事の流れや各部門の役割分担など、組織の全体像を把握しておく必要があります。

会社の現状を知る努力とは、「建物を見て、人を見て、組織を見る」という、

「目(見る)の努力をする」

ということです。

そのために、総務担当者は引っ込み思案であったり、人見知りであっては務まりません。かといって社交家である必要はありません。気軽に頼み事をされる便利屋であってもいけません。
少し煙たがられるぐらいがちょうどいいと考えます。

新聞や雑誌、書籍を“疑いながら・量多く”読む

「情報管理の指令塔」として総務が知っておくべき情報は、会社の中だけにとどまりません。総務担当者は、世の中の流れに敏感であることが大切です。

世の中は常に変化しています。いま、私たちが問題ないと思っていることが、数年後には大問題になることだってあり得ます。例えばパワハラやマタハラにしても、以前はそうした言葉を耳にすることさえありませんでした。

世間の耳目を集めている事件・出来ごとはもちろん、法改正の流れや人事労務に関するトレンドを知っておくことは必須です。新聞や雑誌、書籍など、さまざまなジャンルのものをたくさん読んでください。

ここで大事なのは、そこに書かれていることを“鵜呑みにしない”姿勢です。

前にも述べたとおり、会社のルールは100とおりです。他社にとってよい方法が、自分の会社にそのまま当てはまるということはありません。他社がやっていることや、専門家が主張する考えを知ることは大事ですが、マネをする必要はないのです。

むしろ「ここに書かれていることは正しいか?」「自分の会社に当てはまるか?」と少し疑いながら、情報を吟味する視点が大切です。そうやってたくさんの量の情報にふれていくうちに、自分なりの見識ができてくるはずです。

総務は法的リスクを察知する“アンテナ”である

「コンプライアンス」という言葉が注目されて久しいですが、相変わらず企業不祥事が跡を絶ちません。そうした会社では、総務が「情報管理の司令塔」として機能していなかったのではないかと感じます。

総務担当者は、法令違反に敏感でなければなりません。

それぞれの会社には、それぞれのルールや社風があります。そうしたルールや社風は会社の個性であり、愛社精神を育む土壌でもあります。しかし、社内ルールを尊重するあまり社会ルール(法律や一般常識)を軽んじる傾向が常態化すると、いつか会社は危機的状況に陥ります。

仮に、全社が一丸となって目標達成に向かって邁進しているときであっても、総務担当者は冷めた頭で「そこに法的リスクが潜んでないか」を検証するのが仕事です。そして、法令違反の可能性をキャッチしたら、警鐘をならすことをためらってはいけません。

そのためにも、ふだんから法律知識を身につける努力を続けることが大切です。

もちろん、法律の専門家になれと言うのではありません。法的リスクに対して、“感度のいいアンテナ”を立てておくのです。

そして法的リスクの可能性をキャッチしたら、必要に応じて、会社は社外の専門家の力を借ります。この時、会社側の窓口として、外部の専門家と社内の関係部署との間を橋渡しするのも総務です。

ですから、総務は社内の事情を誰よりも知る“会社の専門家”である必要があります。

最後に、総務に配属されたら、「みんなから好かれる」ことはあきらめてください。
むしろ総務には“嫌われる覚悟”が必要です。ときには社長に対してでさえ、耳に痛いことを言うのが総務の仕事なのです。

たとえみんなから好かれなくても、「仕事で信頼される」総務を目指していただきたいと思います。
執筆者プロフィール

河西知一氏(特定社会保険労務士)
大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。
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