前回に引き続き、具体的な契約書作成のポイントを解説していきましょう。
法的手段によらない対処方法の確保の重要性
前々回からご紹介しているとおり、海外企業を相手とする訴訟などの法的手段は、金銭的・時間的なコストが非常に大きいものです。たとえば、第1回のケース3でいうと、費用対効果が合わないという点でも、判決を得るまでにC社が倒産してしまう可能性があるという点でも、訴訟は現実的ではなかったかもしれません。
そのため、法的手段によらない対処方法を確保しておくことも、トラブルを回避するためには重要となります。
以下、[A]商品を輸出する取引と、[B]商品を輸入する取引を例に、ご説明いたします。
そのため、法的手段によらない対処方法を確保しておくことも、トラブルを回避するためには重要となります。
以下、[A]商品を輸出する取引と、[B]商品を輸入する取引を例に、ご説明いたします。
[A]商品を輸出する取引の場合
(1)商品を輸出する取引の場合には、いかに代金の支払を確保するかが重要となります。
たとえば、
○ 代金の一部の前払を受ける
○ 代金不払に備えて事前に保証金の差し入れを受ける
○ 決済方法を信用状(銀行が発行する支払確約書)にする
などの方法によって、代金不払のリスクを減少させることが考えられます。
たとえば、
○ 代金の一部の前払を受ける
○ 代金不払に備えて事前に保証金の差し入れを受ける
○ 決済方法を信用状(銀行が発行する支払確約書)にする
などの方法によって、代金不払のリスクを減少させることが考えられます。
(2)先方の支払能力に不安が生じた際には、早期に契約を解除することも検討する必要がありますので、契約書にはその契約の解除事由も明確に定めておくべきです。
(3)不当な損害賠償請求をあらかじめ封じるという観点からは、商品について何を保証し何を保証していないのか(仕様への合致、特定の目的への適合性、第三者の権利侵害の有無など)も、明確に定めておくべきです。
[B]商品を輸入する取引の場合
(1)商品を輸入する取引の場合には、反対に、代金は支払ったが商品が納入されないという事態を回避するため、代金の前払はできる限り避ける必要があります。代金の前払には応じない代わりに、決済方法を信用状にすることも考えられます。
継続的な取引の場合には、次のようなことも考えられます。
たとえば、納入後に商品の一部に瑕疵が存在したことが発覚したとします。代金の一部でも後払になっていれば、これから支払期日が到来する別の商品の代金債務と相殺する旨を通知することによって、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権を行使することもできるかもしれません。
継続的な取引の場合には、次のようなことも考えられます。
たとえば、納入後に商品の一部に瑕疵が存在したことが発覚したとします。代金の一部でも後払になっていれば、これから支払期日が到来する別の商品の代金債務と相殺する旨を通知することによって、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権を行使することもできるかもしれません。
(2)きちんとした商品が納入される見込みがない場合には、損害賠償請求や契約解除も検討する必要があります。輸入取引を始める際には、必要に応じて、商品が満たすべき仕様なども明確に定めておくべきです。
最後に……
最後に、英文契約書を作成する方法・法律事務所に依頼する場合の費用・作成タイミングについてもご紹介いたします。
そのため、契約書案の提示を受けた場合も含めて、英文で契約書を作成することになった場合には、可能な限り、英文契約書に対応可能な法律事務所などに依頼された方がよいでしょう。
英文契約書への対応を依頼する際には、担当者の方の確認用に、日本語訳の作成を併せて依頼することも考えられます。
そのため、法律事務所に依頼する場合の費用は、日本文の契約書と比較すると高くなってしまうことが一般的です。契約書の内容や法律事務所によっても異なるため、一概には言えませんが、日本文の契約書の数倍の費用がかかってしまうことも珍しくありません。
もっとも、再三申し上げているとおり、英文契約書の作成には少なくない費用が発生してしまいます。特に中小企業の場合には、費用対効果を意識せざるを得ないでしょう。
そのため、たとえば、商品を輸入する取引であれば、最初は発注書のみで取引を行い、その後も取引が継続し、取引量や金額が増えてきた段階で、契約書を作成することも考えられます。
英文契約書を作成する方法
前回までにご紹介いたしました条項例からもお分かりいただけるとおり、英文契約書には、一般的な英語の文章とは異なる独特な点が存在します。そのため、契約書案の提示を受けた場合も含めて、英文で契約書を作成することになった場合には、可能な限り、英文契約書に対応可能な法律事務所などに依頼された方がよいでしょう。
英文契約書への対応を依頼する際には、担当者の方の確認用に、日本語訳の作成を併せて依頼することも考えられます。
法律事務所に依頼する場合の費用
日本の法律事務所に英文契約書への対応を依頼する場合、日本文の契約書と比較すると通常、作業時間が多くなります。また、法律事務所において、必要に応じて、英米法系の国のネイティブの法律家などの確認を得ることも通常です。そのため、法律事務所に依頼する場合の費用は、日本文の契約書と比較すると高くなってしまうことが一般的です。契約書の内容や法律事務所によっても異なるため、一概には言えませんが、日本文の契約書の数倍の費用がかかってしまうことも珍しくありません。
契約書を作成する時期
海外企業と取引を行うにあたっては、支払条件、商品の仕様、責任の範囲、紛争解決方法などを明確にした契約書を作成しておくことが重要となりますので、本来であれば、取引開始当初から契約書を作成しておくことが望ましいです。もっとも、再三申し上げているとおり、英文契約書の作成には少なくない費用が発生してしまいます。特に中小企業の場合には、費用対効果を意識せざるを得ないでしょう。
そのため、たとえば、商品を輸入する取引であれば、最初は発注書のみで取引を行い、その後も取引が継続し、取引量や金額が増えてきた段階で、契約書を作成することも考えられます。