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[第1回] 年次有給休暇の年5日取得義務

2018年12月10日更新

有給休暇、時間外労働……etc. 働き方改革関連法の概要と実務対応

[第1回] 年次有給休暇の年5日取得義務

[小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)]
2018年6月に働き方改革関連法が成立し、2019年4月から施行される法改正が目白押しです。「残業の上限規制」「年次有給休暇の5日取得」等、頻繁に情報が発信される改正事項については概略を理解されていても、具体的な取扱いやその他の改正事項についてはご存知ない方も多いのではないでしょうか。

働き方改革関連法による主な改正事項は、次表の通りとなっています。

<働き方改革関連法の主な項目>
  項目 概要 施行日 改正法
大企業 中小
1 時間外労働の上限規制 ・時間外労働の上限:原則月45時間、年360時間
・時間外上限:年720h
・単月100h未満(休日労働含む)
・複数月平均80h(休日労働含む)を限度
2019.4 2020.4 労働基準法
2 時間外の上限規制に関する猶予・除外事業 自動車運転業務、建設事業、医師等は時間外労働の上限規制を5年間猶予、研究開発業務は適用除外とする。 2024.4 2024.4 労働基準法
3 月60時間超の時間外労働の割増率引上げ 猶予されていた中小企業の月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を50%以上とする。 2023.4 労働基準法
4 年次有給休暇の年5日取得義務 年10日以上の年休付与者は年5日の取得を義務化。 2019.4 2019.4 労働基準法
5 労働時間の客観的な把握 現認や客観的な方法による労働時間の把握を義務化。(管理監督者含むすべての労働者) 2019.4 2019.4 労働安全衛生法
6 長時間労働者の医師面接指導の見直し 長時間労働者の医師面接指導の時間外労働を月100時間から月80時間に引下げ。 2019.4 2019.4 労働安全衛生法
7 フレックスタイム制の見直し フレックスタイム制の清算期間の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長する。 2019.4 2019.4 労働基準法
8 高度プロフェッショナル制度の創設 年収1,075万円以上の特定高度専門業務従事者について労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外。 2019.4 2019.4 労働基準法
9 勤務間インターバルの導入促進(努力義務) 前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定の休息を確保。 2019.4 2019.4 労働時間等
設定改善法
10 同一労働同一賃金 短時間・有期雇用労働者・派遣労働者と正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消する。 2020.4 2021.4 労働契約法
パート・有期法
労働者派遣法
この中から実務において重要な「時間外労働関係」「年次有給休暇」「労働時間の把握」「長時間労働者の面接指導」「フレックスタイム」「同一労働同一賃金」の6項目について、企業のご担当者様がおさえておくべき改正内容・実務対応について解説します。

これら6項目のうち第1回目は、「年次有給休暇の年5日取得義務」の概要等について解説します。

年5日の年次有給休暇について時季指定が義務化(2019年4月1日施行)

年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得させるよう、企業に義務づけられます。

年次有給休暇について現行法では、労働者が取得の時季を指定(時季指定権)し、これに対し企業からは事業の正常な運営を妨げる場合に限り、申出の時季を変更すること(時季変更権)が認められています。

このような労働者の申出に頼った仕組みであることから、年次有給休暇の取得率も低調となっていました。そこで本改正により、取得が確実に進む仕組みが導入されます。
対象企業 :企業規模問わず
対象者 :年10以上の年次有給休暇が付与される労働者
(管理監督者や比例付与の短時間労働者でも10日以上付与者は対象)
対応事項 :年次有給休暇のうち年5日について、基準日(※)から1年以内の期間に会社が時季を指定して与えることが必要(※)基準日:継続勤務した期間を6ヶ月経過日から1年ごとに区分した各期間の初日(いわゆる付与日)

(出典:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」)

年次有給休暇の時季指定の方法は?(一方的に命令できるか)

年次有給休暇取得の時季指定について、企業は労働者に取得時季の希望を聴かなければならないとされています。そして、実際に時季を指定するに当たっては、できる限り労働者の希望を尊重して時季を指定するよう努めなければならないとされています。

時季指定義務のある年5日の年次有給休暇とは

企業が取得の時季を指定する年5日の年次有給休暇について、その取得方法までは言及されていません。

したがって、これまで通り、労働者がみずから時季を指定して取得した場合、あるいは労使協定に基づき計画的付与により取得した場合で、これらの日数が5日となる場合は、企業による時季指定は不要となります。
例)付与日から1年以内に
(1)労働者が自ら5日取得 →企業の時季指定不要
(2)労働者が自ら3日取得+計画的付与2日 →企業の時季指定不要
(3)労働者が自ら3日取得 →不足2日について企業の時季指定要

労働者ごとに年次有給休暇の管理簿を作成

今回の改正にあたり、労働者ごとに取得の時季、日数、基準日を明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、年次有給休暇を与えた期間の満了後から3年間保存することが必要となります。

年次有給休暇の管理簿は、多くの企業ですでに作成済と思われますが、記載項目を含め確認しておきましょう。
執筆者プロフィール

小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。
著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
事務所ホームページ(https://www.tomscons.co.jp/)
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