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[第11回] 給与・旅費交通費と交際費の関係 遠いようで意外な近さもある

2019年4月19日更新

ケースと図解で学ぶ 交際費と隣接費用判断のポイント

[第11回] 給与・旅費交通費と交際費の関係 遠いようで意外な近さもある

[谷口孔陛氏(税理士)]
これまでの連載で、交際費について必ず押さえておくべき主要な論点について解説してきました。 本連載もあとわずかのため、多くは見かけないもの、金額が大きくないもの、などそれほど影響の大きくないものをまとめていきたいと思います。今回は「給与」「旅費交通費」の2つです。

給与と交際費

個人で負担すべきものは個人で支払うのが原則

「給与と交際費」というと、少しふしぎな感じがするかもしれませんが、この点が問題になることもあります。これは、原則として、「個人で負担すべきお金を会社に支払ってもらったら給与になる」という取り扱いがあるためです。

たとえば、社長の娘が結婚することになり、その結婚式のお金を社長の代わりに会社が出すような場合。結婚式は通常会社とは関係なく、その個人が支払うべきものですから、たとえ会社の社員一同が出席するようなものであっても、会社の経費とすることはできません。
このような場合、社長に対する突発的な給与、いわゆる「役員賞与」という扱いになり、社長にも税金がかかるし会社の損金にもならないし、と良いことがありません。

これはあくまで社長(役員)だからこの処理となりますが、もし従業員の結婚式のお金を出してくれるような会社があれば、その従業員へのボーナスと同じ扱いになりますので、従業員個人に税金はかかるものの会社の損金にすることは可能です(いい会社ですね)。

渡切交際費とは

ただ、役員が相手であっても、一定の場合には会社の損金にすることができます。それは「毎月同じ金額を支払う場合」です。役員への給与には「定期同額給与」といって、「毎月同じ金額を支払いなさいね」という制限がありますが、この条件に合うのであれば、役員個人への税金は避けられないものの、会社の損金にすることができます。
この代表例として「渡切交際費(わたしきりこうさいひ)」というものがあります。これは下の図表のように、「交際費」として使うためのお金を一定額、毎月役員や従業員に支給する、というようなお金のことをいいます。
こうすることで、交際費ではなく給与として処理することができますが、あくまで「給与」ですので、その個人への税金や社会保険料がかかります。源泉所得税の天引き処理などを忘れないよう注意しましょう。

旅費交通費

そのほか、接待に関連する旅費交通費にも注意が必要なケースがあります。
わかりやすいのが「タクシー代」についてです。端的に分けると、

・自社が主催する接待のタクシー代は「交際費」

・自社が接待を受けるときのタクシー代は「旅費交通費」

と状況によって処理が異なります。
これは、「行き(会社から会場への移動等)」も「帰り(会場から自宅への移動等)」も関係なく、どちらが接待をする側かで扱いが決まります。
第2回のときに交際費の定義を解説しましたが、一部を抜粋すると「交際費等とは、接待等のために支出するものをいう」とされています。
(※ 第2回「そもそも交際費ってどんな費用のこと?」参照)

そのため、自社が、接待のために、支払った交通費は「交際費」に該当することになります。一方、他社が主催し、自社がその接待を受けるために支払った交通費は、この要件に該当しません。この要件によって処理が変わるということですね。

まとめ

今回は「給与」「旅費交通費」について解説してきました。

・個人で負担すべきお金を会社に支払ってもらったら給与になる

・渡切交際費は給与なので、源泉所得税等の処理にも注意

・接待に関連する交通費は、立場によって勘定科目が変わる

といった点に気をつけて処理をしましょう。
執筆者プロフィール

谷口孔陛氏(税理士)
谷口孔陛税理士事務所代表。図解を積極的に使い、専門用語に頼らない噛み砕いた説明と、クラウド会計の利用に強みを持つ。クラウド会計に強みを持ちすぎて沖縄の宮古島商工会議所に講師として呼んでいただくも、東京からの日帰りであったため満身創痍で帰宅する。1985年長崎生まれ。著書『できる税理士は知っている これならうまくいくクラウド会計』(共著)
事務所ホームページ・ブログ(https://www.kh-tax.com/)
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