寄附金はどうしてそのまま損金にできないんですか? 交際費と違って、社会的にも意義のある支出だと思うんですが。
特段の理由もなく別の会社に安い価格で物を売ったり、利息を取らずに金銭を貸し付けたりした場合に別の会社にもたらされる経済的利益も含まれており、かなり広い概念となっています。
特段の理由もなく“寄附”という名目で会社の利益を特定の人物や法人に横流ししていながら、全額損金に算入することを認めるとどうなってしまうでしょうか?
交際費と同じで、期末に利益が出すぎたと思った場合などに、寄附の名目で自分と関係のある人物や法人に利益を横流しすることで、所得操作ひいては法人税の納税額の操作が簡単にできてしまいます。 それは課税の公平上、まずい、というわけです。
寄附金控除の制限
そのため法人税法では、寄附する先によって、そのようなリスクが大きいところほど損金に算入できる限度額を小さくしています。具体的には、国や地方公共団体への寄附は、税金を国や地方公共団体に納めるのとほぼ同じことですので、全額を損金算入できます(使途を特定することもできる点、居住地などとは異なる特定の地方公共団体の財源とすることができる点などが税金とは異なります)。
また、国立大学法人への寄附、日本赤十字社の災害義援金や財務大臣がOKを出した赤い羽根募金などの寄附金(指定寄附金)も同様に全額損金算入できます。
これに対して一般の寄附金は、「所得」と「資本金」にそれぞれ一定の率を掛け、それらを足した額のさらに4分の1を限度に損金算入を認めています。
会社の体力を示す指標である「所得」と「資本金」を使って、限度額を出そうというわけです。
掛け合わせている数字はかなり低いものとなっていて、寄附金には厳しい態度で臨んでいることがうかがえます。
なお公益法人や社会福祉法人などへの寄附は、国や地方公共団体が行なってもおかしくないような公益活動を支援する意味合いも込めて、一般の寄附金よりは若干、多めに損金に落としてよいことになっています。
ちなみに政治献金については、法人が行なう場合、一般の寄附金と同じ扱いとなっており、やはり厳しい態度が取られています。
決算書と所得の関係
会社としては、取引先や銀行等との関係から、決算書上は事業がうまくいっていることを示したいがために利益を多くみせたいものです。一方で税金はあまり納めたくないですから、その計算の基となる法人税法の概念である「所得」はできるだけ少なくさせたいものです。
そのため経営者の心理としては、取引先や銀行等への見栄えとの関係からしても必要以上に利益が出そうな年度には、期末に駆け込みで支出を多く計上するなどして利益操作に走りやすくなりがちです。
そこで「課税の公平」を保つために、そのような利益操作をできるだけ税務上の「所得」の計算に反映しないようにしている、というわけです。