本コラムでは、主な改正点である、定型約款、瑕疵(かし)担保責任、消滅時効、法定利率、保証に関して、改正の概要を紹介します。
定型約款
「定型約款」と呼ばれる約款に関する規定が新設されています。インターネット販売における約款や、各種利用規約などの多くは、定型約款に該当します。改正法には、以下のような内容が含まれています。
・定型約款が契約内容になるための要件
・定型約款中の不当な条項の効力の排除
・定型約款の内容を変更するための要件
改正法が施行されると、施行前から存在した定型約款にも、改正法が適用されます。そのため、自社で作成した約款が存在する場合には、改正法に適合した取扱いがなされているかどうか確認しておく必要があります。・定型約款中の不当な条項の効力の排除
・定型約款の内容を変更するための要件
なお、単に当事者間の交渉力の格差を理由として、すべての取引先との間で画一的な契約が締結されていたとしても、それは定型約款には該当しません。そのため、事業者間取引の契約書のひな形は、多くの場合、定型約款には該当しません。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任(売買などの目的物に不具合があった場合の責任)については、「契約不適合責任」へ名称が変更されるとともに、内容的な修正も行なわれています。たとえば、瑕疵担保責任に基づく解除に関しては、現行法では、「契約をした目的を達することができない」ことが必要であったのに対し、改正法では、催告を行なった上での解除であれば、そのような必要はありません。
民法の瑕疵担保責任に関する規定は任意規定ですので、契約書で異なる内容が定められていれば、民法よりも契約書が優先します。そのため、改正法の施行によって、直ちに大きな影響が生じるわけではありません。
もっとも、自社のひな形などを見直し、改正法の内容が自社にとって有利であれば、改正法の内容に合わせて修正したり、反対に、改正法の内容が自社にとって不利であれば、改正法が適用されないように修正したりしておくことは有益です。
なお、改正法施行後も、施行前に締結された契約には、現行法が適用されます。ただし、施行前に締結された契約であっても、施行後に、契約書の自動更新条項によって更新された場合には、改正法が適用されると考えられています。
消滅時効
債権(「○○円支払ってください」などの権利)の消滅時効については、以下のとおり改正されています。【現行法】
・権利を行使できる時から10年
・商事債権は5年(商事消滅時効)
・特定の種類の債権は1~3年
(職業別の短期消滅時効)
・権利を行使できる時から10年
・商事債権は5年(商事消滅時効)
・特定の種類の債権は1~3年
(職業別の短期消滅時効)
→
【改正法】
・以下の①②のいずれか早いほう
・職業別の短期消滅時効は廃止
・以下の①②のいずれか早いほう
①権利を行使できる時から10年
②権利を行使できることを知った時から5年
・商事消滅時効は廃止・職業別の短期消滅時効は廃止
ただし、現行法で職業別の短期消滅時効(民法170~174条)が適用されていた債権については、取扱いが変わります。
なお、改正法施行後も、施行前に生じていた債権や、施行前に成立していた契約に基づく債権については、引き続き現行法が適用されます。
法定利率
法定利率(支払いを怠った場合の遅延損害金などに適用される利率)については、以下のとおり改正されています。【現行法】
・年5%
・年5%
・商事債権は年6%(商事法定利率)
・固定制→
【改正法】
・年3%
・商事法定利率は廃止
・年3%
・商事法定利率は廃止
・変動制(3年ごと、変動する場合は1%ごと)
改正法施行により法定利率が引き下げられますので、自社が支払いを受ける側の場合には、契約書で約定利率を定めることが望ましいでしょう。
保証
保証については、保証人保護の観点から、以下のような改正が行なわれています。・債権者や主債務者が負う、保証人に対する情報提供義務の新設
・個人が保証人となる根保証(不特定の債務の保証)に関して、極度額(保証の上限)を定めなければ無効などのルールを、貸金以外の根保証にも拡大
・事業のための借入れを個人が保証する場合、経営者保証などを除き、事前に公正証書により保証人の意思を確認しなければ無効