本コラムでは、主な改正点について紹介します。
意匠法とは
意匠法とは、意匠(物品のデザイン)を保護することを目的とした法律です。意匠が保護を受けるためには、特許や商標などと同様に、特許庁に出願して、登録を受ける必要があります。主な改正点① ~保護対象の拡充~
以下のとおり、現行法では保護対象外とされていたものが、新たに意匠法の保護対象となります。・物品に記録・表示されていない画像
現行法では、画像が意匠として保護されるためには、物品に記録されていること、物品に表示されることが必要でした。そのため、現行法では、たとえば、物品にインストールされたソフトウェアに基づいて表示される画像は、意匠法の保護対象でしたが、インターネット経由で表示される画像は保護対象外でした。しかし、改正法では、これらの要件が撤廃されたため、物品に記録または表示されていない画像も、新たに意匠法の保護対象となります。そのため、たとえば、クラウド上に保存されインターネットを通じて表示される画像(ウェブサイトのデザイン等)や、壁や道路に投影される画像(壁に投影される時刻表示、自動車から道路に投影される後退やドア開けを知らせる表示等)も、保護対象となります。
なお、改正法の下でも、物品の機能と関係しない装飾画像(壁紙デザイン等)は、保護対象とはされていません。
・建築物の外観・内装のデザイン
現行法では保護対象外であった、建築物の外観や内装のデザインが、新たに意匠法の保護対象となります。なお、建築物の内装のデザインについては、内装全体として統一的な美観を起こさせるものである場合に保護対象となります。そのため、たとえば、これまで十分な法的保護が与えられていなかった店舗のデザインについても、意匠法の保護の対象となりますので、店舗に独創的な空間デザインを施しているような場合には、意匠制度を活用することも考えられます。
【新たに保護対象となるものの例】
・クラウド上に保存されインターネットを通じて表示される画像
・壁や道路に投影される画像
・店舗の内装のデザイン
・クラウド上に保存されインターネットを通じて表示される画像
・壁や道路に投影される画像
・店舗の内装のデザイン
主な改正点② ~関連意匠制度の見直し~
関連意匠制度とは、自己の登録意匠(本意匠)に類似する意匠について、意匠の登録を認める制度です。通常は、既存の登録意匠と類似する意匠の登録は認められませんが、関連意匠制度はその例外となる制度です。関連意匠制度については、以下の改正が行なわれています。
・出願可能期間の延長
関連意匠の出願可能期間について、現行法の「本意匠の登録の公表日まで」(一般的には、意匠が出願されてから、意匠登録が認められ、登録が公表されるまで8か月程度)から、「本意匠の出願日から10年以内」に、大幅に延長されます。このように関連意匠の出願可能期間が延長されることは、一貫したデザインコンセプトを継続的に用いてブランド構築を行なうような場合に、特に有益です。
【現行法】
・本意匠の登録の公表日まで
(本意匠の出願日から8か月程度)
・本意匠の登録の公表日まで
(本意匠の出願日から8か月程度)
→
【改正法】
・本意匠の出願日から10年以内
・本意匠の出願日から10年以内
・関連意匠にのみ類似する意匠の登録
現行法では、関連意匠には類似するが本意匠には類似しない意匠については、関連意匠としての登録が認められていませんでした。改正法では、このような関連意匠にのみ類似する意匠についても、関連意匠として登録が認められるようになります。
このように関連意匠にのみ類似する意匠の登録が認められるようになることは、既存のデザインに少しずつ改良を加えていくような場合に、特に有益です。
主な改正点③ ~意匠権の存続期間の延長~
意匠権の存続期間が、現行法の「登録日から20年」から、「出願日から25年」に変更されます。一般的には、出願から1年以内に登録されることが多いため、実質的には、意匠権の存続期間が4年程度延長されることになります。