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税務調査で指摘されやすい年末調整の留意点

2019年12月5日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

税務調査で指摘されやすい年末調整の留意点

[田中康雄氏(税理士)]
年末調整のための申告書や控除証明書などの書類が集まり始めると、年末調整も大詰めを迎えます。昨年は配偶者控除や配偶者特別控除の改正があり、来年も基礎控除の改正などがあって、ますます複雑になりそうな年末調整ですが、税務調査では年末調整の内容についてもチェックが入ります。
本コラムでは、そんな年末調整の手続きの中で、税務調査において指摘されがちな項目について取り上げます。

年末調整の適用範囲

給料以外に収入がある従業員から、「毎年確定申告をしているので年末調整は必要ありません」と言われることがあるかもしれません。
しかし、年末調整の対象にならない人は、次の場合に限られています。
・給与の収入金額が2,000万円を超える人
・災害等で源泉所得税等の徴収猶予または還付を受けた人
・源泉徴収税額表の乙欄または丙欄適用者
・中途退職者
・非居住者
つまり、上記以外の従業員について会社は年末調整を行なう義務があるため、年末調整を実施しなければならないことになります。
年末調整の対象となる従業員には、その旨、きちんとした説明が必要です。

住宅ローンの借り換え

近年、住宅ローン金利は低い水準にあり、借り換えによる手数料などを考えても返済の総額を減らせる場合が少なくありません。
借り換えの際には、借り換えに係る諸費用を新たなローンに含めることが多く、借り換え後の元本が借り換え前より増えることもあります。そんな借り換えをした従業員から提出された金融機関からの年末残高証明書の金額をそのまま年末調整に反映してしまうと、過大に還付することになりかねません。
借り換えによってローン残高が増加するようなケースでは、特別控除額の計算のもととなる年末ローン残高は、次のように算定する必要があります。


(控除対象となる年末残高の計算式)
借り換えによる新たなローンの年末残高×
借り換え直前における当初のローン残高
借り換えによる新たなローンの借入時の金額
 
住宅ローン控除の適用を受ける従業員は社内でもそれほど多くはなく、また還付される金額が大きくなるため、税務調査においては前年度のローン残高と比較することで、借り換えがあったかどうかを確認しています。
住宅ローン控除を受けている従業員の年末調整を行なう際には、前年度のローン残高と比較することが大切です。

年調後の扶養是正

毎年1月31日を提出期限として 各市区町村には給与支払報告書を提出しなければなりません。これは年末調整の対象にならない人も含め、給与の支払いがあれば必ず提出することになります。これにより、税務署では把握しきれない扶養親族の所得も、市区町村では比較的容易に確認することができます。
扶養親族の所得が扶養の範囲内を超えていた場合、市区町村から「特別徴収税額変更の通知書」などの通知が会社に届きます。住民税の場合、通知書の内容に従ってその従業員から徴収する金額を変更して給与天引きし、これを納付すれば足りますが、税務署ではこのやり取りが把握できません。
そこで、税務調査の中で「市区町村から特別徴収税額変更に関する通知書などが届いていたら見せていただけますか」とお願いされます。
つまり、これによって調査官は会社側が市区町村からの扶養是正の通知に基づいて年末調整をやり直し、正しく国税にも反映しているかどうかを確認しています。

年末調整は会社に義務づけられた制度です。また、上記のような誤解や計算誤り、手続きの失念などがあると、税務調査では年末調整のやり直しを求められ、対象の従業員から税金を徴収してこれを納付しなければなりません。
この場合、会社側にもペナルティとして、必ず不納付加算税が課されることに注意が必要です。
執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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