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民法の瑕疵担保責任に関する改正

2020年1月15日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

民法の瑕疵担保責任に関する改正

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]
本コラムでは、2020年4月1日から施行される改正民法における瑕疵(かし)担保責任(なお、改正民法では、「契約不適合責任」に文言が変更されました。)について、より詳細な内容を紹介します。

瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは、売買契約や請負契約等において、取引の目的物に不具合等が存在した場合に、売主や請負人が、買主や注文主に対して負う責任のことです。
なお、民法の瑕疵担保責任に関する規定は、任意規定(当事者間で異なる内容の合意が存在する場合には適用されない規定)ですので、契約書において瑕疵担保責任に関する規定が存在すれば、契約書の内容が優先します。

瑕疵担保責任に関する主な改正点

瑕疵担保責任に関する主な改正点は、以下のとおりです。

<全般的な点>

・「瑕疵」→「契約不適合」、「瑕疵担保責任」→「契約不適合責任」と文言が変更されました。もっとも、現行法においても、「瑕疵」とは「契約の内容に適合しないこと」であると解釈されていましたので、実質的な改正点ではありません。

・売買契約に関する瑕疵担保責任について、瑕疵が「隠れた」ものであることは不要となりました。

・現行法では、売買契約に関する瑕疵担保責任の規定と、請負契約に関する瑕疵担保責任の規定は別々に定められていましたが、統一されました。

<買主や注文主が請求可能な内容に関する点>

・履行の追完請求(目的物の修補※、代替物の引渡し等)や代金減額請求が追加されました。
※目的物の修補については、現行法でも請負契約に関しては定めがあります。

・損害賠償請求には、売主や請負人の帰責事由が必要となりました。なお、一般的には、「契約不適合」が存在する場合には、売主や請負人に帰責事由も存在する場合が多いと思われます。

・契約解除に関して、「契約をした目的を達することができないとき」であることは不要となりました。

<買主や注文主が請求可能な期間に関する点>

請負契約に関する瑕疵担保責任については、現行法では、「引き渡した時から1年以内」でしたが、改正法では、注文主が「不適合を知った時から1年以内」に変更されました。請負人にとっては不利益が大きい改正点です。なお、売買契約に関しては、改正法下においても、商人間の売買(会社間の売買等)であれば、現行法下と同様に、商法526条に定められた期間制限が適用されます。

・現行法では、買主や注文主は、定められた期間内に、解除または損害賠償請求等まで行なっておく必要がありますが、改正法では、定められた期間内に、契約不適合の内容を通知すれば足りることとされました。

経過措置

改正民法が2020年4月1日から施行されたとしても、2020年4月1日より前に締結されていた契約については、原則として、現行法が適用されます。
ただし、2020年4月1日より前に締結されていた契約であっても、自動更新条項によって2020年4月1日以降に更新された場合には、更新後は改正法が適用されます。
また、基本契約が2020年4月1日より前に締結されていた場合であっても、それに基づく個別契約が2020年4月1日以降に締結された場合は、その個別契約に関しては改正法が適用されると考えます。

契約書の修正の要否

前述のとおり、民法の瑕疵担保責任に関する規定は任意規定であり、契約書の内容が優先しますので、民法改正にともなって、直ちに契約書の修正が必要になるわけではありません。
改正法に合わせて、契約書の文言も、「瑕疵」→「契約不適合」と修正しておくことも考えられますが、実質的な改正点ではありませんので、その点のみを修正するために契約書を作成し直すことも、通常は必要ないでしょう。

もっとも、現在の契約書の内容を前提とすると、改正によって変更された民法の規定が適用される可能性があり、それが自社にとって不利となる場合には、その規定が適用されないように契約書を修正することも考えられます。
たとえば、自社が請負人である請負契約において、瑕疵担保責任の期間制限が定められていない場合、改正法が適用されると、「不適合を知った時から1年以内」になってしまいますので、契約書において、「引き渡した時から1年以内」と定めておくことが考えられます。

また、現在の契約書の内容よりも、改正によって変更された民法の規定のほうが自社にとって有利となる場合には、改正法の内容に合わせて契約書を修正することも考えられます。
たとえば、自社が買主である売買契約において、瑕疵担保責任に基づく契約解除の要件として、「契約をした目的を達することができないとき」と定められている場合、改正法の内容に合わせて、この要件を削除しておくことが考えられます。

修正によって得られるメリット、修正を行なわなかった場合のリスク、契約相手との力関係、修正に要するコスト等を総合的に考慮して、契約書の修正の要否を判断するのがよいでしょう。
執筆者プロフィール

今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/

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