雇用は回復傾向にある
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって、2年を迎えようとしています。この間、雇用情勢は大きく変化しました。正社員有効求人倍率は、2019年の中頃からすでに下落が始まっていましたが、コロナ禍で下落が加速しました(下図参照)。最近は相当持ち直し、1人の求職者に対し、1件の求人がある状態である1.0倍に近づいてきています。
また、完全失業率は、コロナショック直前である2019年12月は2.2%と、歴史的に見ても低い水準でした。コロナ感染拡大に伴って上昇(悪化)に転じましたが、最近になって改善傾向もみられます。 全体的に、雇用は回復傾向にあるとみて差し支えないでしょう。
なお、「人手不足」の状況については、2021年6月調査の日銀短観の雇用人員判断DIで、多くの業種が3か月後も「不足」超過の状態にあると予測されています。雇用が回復傾向にある一方で、けっして人手不足が解消したというわけではありません。
○正社員有効求人倍率の推移(季節調整値)
(出所:厚生労働省『一般職業紹介状況』をもとに作成)
アフターコロナの労働市場
アフターコロナで労働市場に起きる変化として、2つのことが予想されます。ひとつは顧客と接する仕事からそうでない仕事への、労働力需要のシフトです。デパートなどの店舗で接客販売をする仕事や、顧客を訪問して営業をする仕事、飲食店での給仕の仕事などは、感染症が流行すると営業を自粛したり、営業時間を短縮したりしなければならないことがわかりました。それなのに人を雇っていては、企業は大きな損失を被ります。今後は人間が行なう形から機械やインターネットを利用する方向に移行してゆくでしょう。ただし、顧客と接する仕事でも、社会福祉や介護の仕事は、現状では人が行なう以外の有力な代替策がみつかっていません。また、感染症が流行しても、営業自粛を呼びかけられるような仕事ではありません。労働力需要が増えることこそあれ、減ることはないでしょう。
アフターコロナで労働市場に起こる変化としてもうひとつ予想されることは、テレワークがしにくい仕事からしやすい仕事への需要のシフトです。テレワークは、オフィスの賃料がかからない、通勤手当を削減できる、通勤圏外の遠隔地からも労働者を雇用できるなど、企業にとっても魅力的な面があります。アフターコロナでは、ますます広がってゆくことでしょう。とくに、管理職や専門職、事務職などは、テレワークがしやすい職種であり、労働力需要が高まってゆくとみられます。
人材採用では、自社にとって必要な人材を厳選することが、入社後のミスマッチを防ぐためにも重要となりますが、実際のところ、世間全体が人手不足の時には「厳選」などとは言っていられず、なかなか実現が難しいのが一般的です。前述の通り、アフターコロナでは、業種や職種によって労働力需要に格差が生じることが予想されます。労働力需要の高まる仕事については、厳選採用ができるチャンスといえるかもしれません。