そこで、税務調査でも特に注目されることが多い「継続的取引の基本となる契約書」、いわゆる第7号文書と印紙税について確認していきます。
「継続的取引の基本となる契約書」とは
継続的取引の基本となる契約書(以下「第7号文書」といいます)とは、特定の相手方との間で継続的に行なわれる取引の基本となる契約書をいいます。ただし、契約期間が3か月以内の場合で、更新の定めがないものは除かれます。第7号文書に係る印紙税の額は、1通当たり一律4,000円です。
第7号文書には、具体的に次のような契約書が該当します。
(1)営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱いまたは請負に関する2以上の取引を継続的に行なうため、その取引に共通する基本的な取引条件で、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法または再販売価格のうち、1以上の事項を定める契約書
(例)売買取引基本契約書、貨物運送基本契約書、下請基本契約書など
(2)営業者間に限らず、両当事者間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務または株式の発行もしくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務または事務の範囲または対価の支払方法を定める契約書
(例)代理店契約書、特約店契約書、業務委託契約書など
(3)その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの
(例)銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など
第7号文書の判断基準
第7号文書は、「運送に関する契約書」(第1号文書)または「請負に関する契約書」(第2号文書)にも重複して該当することがあります。この場合、基本的に単価のみが記載されているものは第7号文書、契約金額そのものの記載があるものは第1号または第2号文書に該当します。
では、第7号文書に関して、特に実務上で判断に迷うことが多い、前項(1)の条件について確認してみましょう。
・『営業者間』
第7号文書は、契約当事者の双方が「営業者」である場合に限られます。
営業者とは、利益を得る目的で同種の行為を反復的、継続的に行なう者をいい、現実に利益が得られなかった場合や、1回でやめたとしても、反復、継続の意思があれば営業に該当します。
個人では、商法上の商行為に該当しない行為を業務とする医師、弁護士、税理士等のいわゆる自由職業者、法人の場合には、公益社団法人、学校法人、社会福祉法人等は、営業者に該当しません。
・『2以上の取引を継続して行なう』
契約の目的となる取引が、2回以上継続して行なわれることをいいます。ここは、あくまでも取引回数での判定です。
・『基本的な取引条件』
- 目的物の種類
- 取引の対象の種類をいい、物品等の品名のほか、電気製品などのように共通の性質を有する多数の物品等の名称も含まれます。
- 取引数量
- 取扱量として具体的な数値のほか、たとえば1か月の最低取扱数量は10トンとするなど、一定期間の最高または最低取扱(目標)数量や金額による取扱目標金額を定める場合も含まれます。
- 単価
- 1単位あたりの具体的な数値をいい、時価などの表現は単価には該当しません。
- 支払方法
- たとえば、毎月分を翌月15日に支払うや60日手形で支払うなど、対価の支払いに関する具体的な支払方法をいいます。
- 損害賠償の方法
- 債務不履行が生じた場合を想定して、その損害の賠償として給付される金額、数量等の計算、給付の方法等をいい、不履行となった債務の弁済方法をいうものではありません。
- 再販売価格
- メーカーや卸業者から商品を買い受けた事業者がこれを販売する価格や、その事業者からその商品を買い受けた他の事業者がさらにエンドユーザー等に販売する場合の価格をいいます。
変更契約(覚書)
すでに存在している契約(原契約)のうち、契約上の重要な事項を変更する場合で、原契約が第7号文書の場合には、たとえ変更契約の名目が「覚書」となっていても、第7号文書に該当します。この場合の重要な事項の変更には、契約期間の変更や上記の「基本的な取引条件」の変更が該当します。