このような場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、労働基準法により、休業させた所定の労働日について、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要となります。
今回は、この休業手当の計算方法について説明します。
平均賃金とは
平均賃金は、解雇予告手当、会社都合による休業、年次有給休暇取得時の賃金、懲戒処分の減給等、労働基準法で定められている手当や補償等を算定する際の基準となるものです。これらの手当等は、その目的が労働者の生活保障であるため、平均賃金は賃金の実態を反映するような算出方法となっています。
原則的な平均賃金の算定方法
平均賃金を算定すべき事由が発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総暦日数で除した金額となります。その期間の総暦日数
会社都合による休業では、休業する日が「算定すべき事由が発生した日」となります。
(2)「以前3か月」
「以前3か月」には、算定すべき事由が発生した日は含まず、その前日から遡って3か月となります。
(3) 賃金締切日がある場合
賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月となります。賃金締切日に算定すべき事由が発生した(休業させた)場合は、その前の締切日から3か月遡ります。
(4) 賃金総額
算定期間に支払われたすべての賃金が含まれます。したがって、通勤手当、時間外手当、皆勤手当、年次有給休暇の賃金等も含まれます。
(5) 端数の取扱い
算定した金額に銭未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てることは差し支えないとされています。
(6) 算定に含まれない期間
次の期間がある場合、その日数と賃金額は、算定期間と賃金総額から控除します。
・産前産後休業期間
・育児・介護休業期間
・試用期間
・業務上の傷病による休業期間
・使用者の責による休業期間
賃金締切日:毎月15日、算定事由発生日:2020年4月20日、休業:1日
・3月分(2/16~3/15):暦日数29日、賃金総額:25万円
・2月分(1/16~2/15):暦日数31日、賃金総額:26万円
・1月分(12/16~1/15):暦日数31日、賃金総額:27万円
→ 8,571.42円(銭未満切捨て)
休業手当:8,571.42円×0.6=5,143円(円未満四捨五入)※※50銭未満切捨て、50銭以上1円に切上げも可
最低保障(算定方法の例外)
賃金の一部または全部が、日給制、時給制、出来高給制の場合、算定期間中の労働日数が少ないと、平均賃金も低額になってしまいます。こうした事情を考慮して、最低保証(算定方法の例外)が定められており、賃金総額を、その期間の実労働日数で除した金額の60%が最低保障となります。最低保障額が、原則的な方法により算出した平均賃金を上回る場合は、最低保障額が平均賃金となります。
賃金締切日:毎月15日、算定事由発生日:2020年4月20日、日給:1万円、休業:1日
・3月分(2/16~3/15):暦日数29日・労働日数15日、賃金総額:15万円
・2月分(1/16~2/15):暦日数31日・労働日数16日、賃金総額:16万円
・1月分(12/16~1/15):暦日数31日・労働日数15日、賃金総額:15万円
(15万円+16万円+15万円)÷(29日+31日+31日)=5,054.9450…円
→ 5,054.94円(銭未満切捨て)
【最低保障による計算】(15万円+16万円+15万円)÷(15日+16日+15日)×0.6=6,000円
原則と最低保障を比較すると、最低保障額のほうが高いため、この場合の平均賃金は6,000円、休業手当は3,600円(=6,000円×0.6)となる。