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従業員への給与課税と源泉徴収

2020年8月20日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

従業員への給与課税と源泉徴収

[田中康雄氏(税理士)]
従業員に対して給与や賞与を支給する場合、会社には所得税と復興特別所得税の源泉徴収義務があります。また、給与などの名目以外で金銭等を支給する場合であっても、その支給の実態が給与に該当するときには、源泉徴収が必要となります。
本コラムでは、税務調査でも注目されやすい従業員への金品等の支給に対する源泉徴収の可否について確認します。

慶弔関連

従業員の結婚、出産等に対して支給する祝金品や、香典、災害等の見舞金は、その金額が社会通念上相当と認められるものであれば「給与所得」には該当しません。
「社会通念上」というラインが曖昧ですが、税務調査では他の従業員等との公平性の観点から、「慶弔見舞金規程」などによる支給根拠の確認が行なわれます。そのため、社内規程等をしっかり整備しておくことが重要といえます。
なお、今般のコロナ禍で使用人から支給を受けた一定の見舞金を非課税所得とする取扱いが、法令解釈通達によって明らかにされています。
ただし、支給要件に該当しないものや、緊急事態宣言が解除されてから相当期間経過して支給の決定がなされたものについては、非課税所得には該当しない場合があるため注意が必要です。

永年勤続等の表彰

福利厚生の一環でもある永年勤続者への記念品等の支給についても、その価額が一般的な範囲内であれば「給与所得」として課税しないとされています。
しかし、金銭での支給はもちろん、品物であっても自由に選択できるような場合には「給与所得」に該当します。また、勤続10年未満の短期勤務者や、表彰の間隔が5年未満の場合の支給についても「給与所得」として取り扱われるため注意が必要です。

技術の習得等のための会社負担

従業員個人にとって専属的な資格となる免許等の取得のための費用を会社が負担する場合、通常、その負担額は従業員の「給与所得」となります。
しかし、会社が業務を遂行するうえで直接必要なものとして従業員に資格等を取得させるため、適正な額の範囲内でその費用を会社が負担するものは「給与所得」に該当しません。
あくまでも「業務の遂行上、直接的かどうか」が給与所得に該当するか否かの目安となるため、その判定にあたっては十分に留意すべきです。

休業手当

今般のコロナ禍の影響により休業を余儀なくされた従業員に会社が支給する休業手当は、雇用調整助成金の対象となっています。従業員の生活の保障を目的として、休業手当を支給した会社は多いかもしれません。
会社側の都合によって従業員を休業させた場合に支給される休業手当は、災害補償として非課税所得とされる「休業補償」とは異なり、「給与所得」として課税対象になります。
なお、今般のコロナ禍の影響による休業に対して会社から休業手当等が支給されなかった従業員等を救済するため、令和2年度第二次補正予算において「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が創設されています。
この支援金・給付金については、会社から支給される休業手当とは異なり、国等から支給される助成金であるため、雇用保険臨時特例法により個人所得としては非課税所得となります。

解雇予告手当

予告なく従業員を解雇する場合には、その従業員の平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払いが義務付けられていますが、税務上、この支払いは「給与所得」ではなく、「退職所得」に該当します。
退職金を支給する場合、通常、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受け、これにより退職所得を計算して源泉徴収します。
ただし、この申告書の提出がなかった場合には、退職金の多寡にかかわらず、その支払金額の20.42%を源泉徴収する必要があります。
即日解雇のようなケースで、申告書の提出を受けることが難しい場合には、解雇予告手当の支給金額に対し源泉徴収が必要になります。税務調査でも、このケースでの源泉徴収モレの指摘が多く見受けられます。

源泉徴収しなかった場合

源泉徴収が必要だったことが、税務調査などで発覚するケースは多いといえます。
この場合、ペナルティとして本税部分の10%相当額の不納付加算税が課されます。従業員等に金品等を支給する場合には、源泉徴収の可否の判断に注意が必要です。
執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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