しかし、保存スペースの確保にはコストを要し、書類はなるべく早く処分したいと考えている会社も多いかもしれません。ただ、税務調査への対応のため、税務上においても帳簿等の保存期間が定められています。
本コラムでは、税務の観点から必要とされる各種帳簿等の保存期間や保存方法について確認します。
保存が必要な帳簿書類の種類
青色申告法人は、「帳簿」を備え付けて取引を記録し、その取引等に関して作成または受領した「書類」を保存する必要があります。これら帳簿と書類を併せて、以下「帳簿書類」といいます。「帳簿」・・・(例)総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
「書類」・・・(例)棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など
帳簿書類の保存期間
帳簿書類の保存期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間が原則です。税務調査は、通常、直近3年分の事業年度が対象期間となります。ただ、調査を進めていくなかで、非違項目につながる誤りや計上漏れなどが「その対象期間よりも前の期間にわたって生じているのではないか」と疑われるような場合には、さらに2年遡って調査が行なわれることがあります。
減額更正の請求ができる期間が5年間となっていることもあって、税務調査が実施できる期間も5年間と考え、帳簿書類の保存期間は5年で十分だと判断しているケースも見受けられます。
しかし、会社側での処理等のなかで「偽りその他不正の行為」が認められる場合には、さらに2年遡り、合計7年間が税務調査の対象となることもあります。つまり、これが帳簿書類の保存期間の根拠ということになります。
なお、青色申告法人について、その事業年度に欠損金が生じた場合には、その欠損金の繰越期間に応じて、帳簿書類の保存期間が次のとおり延長されます。
欠損金が生じた事業年度 | 保存期間 |
平成20年4月1日以後に終了し、平成30年4月1日前に開始する事業年度 | 9年間 |
平成30年4月1日以後に開始する事業年度 | 10年間 |
帳簿書類の保存方法
帳簿書類は、「紙」による保存が原則的な方法となります。パソコンによって作成された帳簿書類は、印刷しておく必要があります。しかし、紙での保存には一定のスペースが必要になりますので、紙以外での保存も例外的に認められています。
以下、紙以外での保存について本コラムでは簡単な説明となりますが、保存の確実性を担保するため適正な社内規程を整備するとともに、データの真実性を確保するため複数の厳しい要件をクリアする必要があり、そのハードルはかなり高いといえます。
(1)電磁的記録(電子データ)による保存
電子データによって最初の記録段階から一貫してパソコンで作成した帳簿書類は、あらかじめ税務署に申請して承認を受けることで、サーバやDVD、CD等で保存することが認められています。この方法による保存が承認されるためには、以下の要件をクリアできるシステムの構築が必要となります。
①真実性の確保 |
・データの訂正、削除、追加の事実やその内容の確認ができるシステムであること ・一連番号等により帳簿間の相互関連性が確認できること ・システム関係書類や事務手続きに関する社内規程等の書類を備え付けていること |
②可視性の確保 |
・電子データを整然かつ明瞭に表示または書面により出力できること(見読可能装置の備付け) ・日付、金額等の範囲の指定や条件設定を組み合わせて検索できる機能が確保されていること(検索機能の確保) |
(2)スキャナ読取りによる保存
領収書や契約書、請求書、納品書、見積書、注文書等の一定の書類に限っては、あらかじめ税務署に申請して承認を受けることで、スキャナ読取りによるスキャナ保存が認められます。ただし、決算関係の書類や帳簿については、スキャナ保存が認められていません。スキャナ保存では、書類等の書き換え防止等の観点から、たとえば、領収書や請求書等を受領した場合、その受領者等が受領後に署名のうえ、3日以内にタイムスタンプを付す必要があるなど、真実性や可視性の確保のための要件が厳しく設定されています。
(3)マイクロフィルム(COM)による保存
上記(1)と同じく、最初の記録段階から一貫してパソコンで作成した帳簿書類は、あらかじめ税務署に申請して承認を受けることで、COMによる保存が認められています。COMによる保存では、上記(1)に掲げる要件のほか、一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダプリンタの備付けや、(1)による3年間の並行保存などの要件が追加されています。