2021年3月1日より、この障害者の法定雇用率が引き上げられることになりました。今回は、改正内容と関連する制度について解説していきます。
(1)改正内容
民間企業での障害者の法定雇用率は、2018年4月の障害者雇用促進法の改正により、2.2%とされてきましたが、今回の改正により、2.3%に引き上げられることになります。これに伴い、障害者を1人以上雇用しなければならない事業主の範囲が「従業員45.5人以上」から、「従業員43.5人以上」に広がることになりました。
「令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります」(厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/000694645.pdf
この改正に伴い、従業員43.5人以上の事業主については、次の対応が求められるようになります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000694645.pdf
①毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告すること
②障害者雇用の促進と継続を図るために「障害者雇用推進者」を選任するように努めること
③障害者を解雇しようとする場合、ハローワークに解雇届を届け出ること
(2)障害者雇用率制度における人数のカウント方法
①従業員数のカウント
雇用すべき障害者数を算出するためには、まず、その基礎となる従業員数のカウントが必要となります。事業所(支店等)が複数あり、事業所ごとに雇用保険の適用事業所番号が異なっている場合であっても、事業主(企業)全体で集計します。
1年を超えて雇用されている、または、1年を超えて雇用される見込みがある「常用労働者」が対象となり、週の所定労働時間によってカウント方法が異なります。 有期契約社員や、パート・アルバイト、派遣社員等、雇用契約の形式如何を問わず、上記に当てはまる場合にはカウント対象になります。
なお、障害者雇用が困難とされる業種については、従業員数を控除する「除外率制度」が設けられているため、この限りではありません。
②雇用障害者数のカウント
雇用する障害者数は、週の所定労働時間や障害の種類・程度によって、カウント方法が異なります。 *条件によっては、1とカウントする場合がありますここで、精神障害者をカウントする際、精神障害者の手帳「精神障害者保健福祉手帳」には、有効期間が設けられていることに留意しましょう。有効期限が切れていればカウントはできませんので、実務上、精神障害者を管理する場合には、対象者と合わせて手帳の有効期限も把握しておくことが求められます。
(3)障害者雇用納付金制度
障害者雇用率制度に基づき、雇用義務を守っている企業とそうでない企業とで経済的負担を調整するために、納付金制度が設けられています。 さらに、自宅等において就業する障害者に一定金額以上の仕事を発注した事業主に対しては、「特例調整金」または「特例報奨金」が支給されます。また、令和2年4月から週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害者を雇用する企業に対し、「特例給付金制度」も始まっています。
「週20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000587504.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000587504.pdf
(4)障害者雇用認定制度
令和2年4月から障害者雇用の促進や安定に関する取り組みなどが優良な中小企業を認定する制度が始まりました。(もにす認定制度)もにす認定を受けると、企業の社会的認知度を高めることをはじめとし、日本政策金融公庫の低利融資対象、公共調達等における加点評価を受けられる場合があります。
「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html
障害者雇用に取組むこと、また認定制度に取組むことによって、組織体制、仕事内容、働き方、キャリア形成等、企業として組織のあらゆる角度を見直していくことになります。これをきっかけとして、障害者雇用の安定を図るのはもちろんのこと、女性や高年齢者等、組織における多様性が促進されるかもしれません。誰もが活躍できる職場づくりに繋げる組織戦略の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。