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控除対象外消費税額等の取扱い

2021年5月20日更新

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控除対象外消費税額等の取扱い

[田中康雄氏(税理士)]
消費税の申告上、課税仕入れに係る消費税額については、そのすべてを仕入税額控除として取り扱うことができないケースが生じます。法人税ではこれを「控除対象外消費税額等」として取り扱い、その事業年度においてこれらを全額損金算入することができない場合があります。
本コラムでは、会計処理において税抜経理を採用している法人が、法人税の申告上留意すべき控除対象外消費税額等について確認します。

控除対象外消費税額等とは

消費税の申告では、課税売上高が5億円を超える場合または課税売上割合が95%未満になる場合、「個別対応方式」または「一括比例配分方式」のいずれかの方式により申告する必要があります。
会計上、税抜経理を採用している法人が個別対応方式による場合には、課税仕入れ等に係る消費税額のうち、「非課税売上のみに対応する部分」と「課税売上と非課税売上に共通して対応する部分のうち、課税売上割合に相当する部分以外の部分」が、控除対象外消費税額等に該当します。
また、一括比例配分方式による場合には、「課税仕入れ等に係る消費税額のうち、課税売上割合に相当する部分以外の部分」が、控除対象外消費税額等に該当します。

控除対象外消費税額等のうち、繰延消費税額等に該当する場合

税抜経理の場合、控除対象外消費税額等は、その性質上、これらを租税公課等としてその事業年度において損金経理することになります。
しかし、法人税の申告においては、以下の要件に該当する場合、一定の控除対象外消費税額等を「繰延消費税額等」として認識し、これを一時に損金算入せず、資産計上する必要があります。
(1)会計処理として税抜経理を採用していること
(2)その事業年度の課税売上割合が80%未満であること
(3)控除対象外消費税額等のうち、棚卸資産に係るものではないこと
(4)一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円以上であること

繰延消費税額等の損金算入の方法

上記の判定により、控除対象外消費税額等が繰延消費税額等に該当することとなった場合には、以下の方法により計算した金額を各事業年度において順次損金算入していきます。

(1)繰延消費税額等が生じた事業年度
繰延消費税額等としてその全額を資産計上したうえで、これを60で除し、その事業年度の月数を乗じた金額の2分の1に相当する金額につき損金経理した金額

(2)翌事業年度以降
当初生じた繰延消費税額等の額を60で除し、その事業年度の月数を乗じた金額につき損金経理した金額

簡易課税制度の場合

消費税の申告において簡易課税制度を選択している法人においても、会計処理として税抜処理を採用している場合には、消費税の申告とは別に控除対象外消費税額等を認識し、これが繰延消費税額等に該当するかどうかを判定する必要があります。
繰延消費税額等は消費税法上の規定ではなく、あくまでも法人税法上の規定であるため、申告漏れに注意が必要です。
執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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