(1)テレワークにおける労働時間の把握
使用者は、労働者の労働時間を適正に把握する義務があります。テレワークの場合も同様で、働く場所が離れているからといって、労働時間の把握義務がなくなるわけではありません。ガイドラインでは、使用者が労働時間を把握する方法として、以下の方法が示されました。①客観的な記録による把握
情報通信機器の使用時間の記録等により、労働時間を把握します。また、サテライトオフィスを使用してテレワークを行なう場合には、サテライトオフィスへの入退場時刻の記録等によって把握する方法なども考えられます。②労働者の自己申告による把握
情報通信機器を使用していたとしても、使用時間の記録が労働者の始業・終業時刻を反映できないような場合には、以下のような措置を講じたうえで、労働者の自己申告により労働時間を把握することが考えられます。・労働者に対して、労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行なうことなどについて十分な説明を行なうことや、労働時間を管理するものに対して、自己申告制の適正な運用について十分な説明を行なうこと
・客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合(※)には、労働時間の補正をすること
・自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと
※客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合とは、「申告された時間以外の時間にメールが送信されている」、「申告された始業・終業時刻の外で長時間パソコンが起動していた記録がある等の事実がある」などのケースを指します。始業時刻や終業時刻にメールやチャット等により報告するなど、大きな乖離が生じないようにしましょう。
(2)労働時間制度について
テレワークを実施する場合でも、労働基準法に定められた全ての労働時間制度を適用することができますが、なかでも、テレワークで注目されている制度のひとつが、「事業場外みなし労働時間制」です。事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定することが困難なときに適用される制度です。「労働時間をみなす」とは、たとえば、「みなし労働8時間」とした場合、事業場外での実際の労働時間が何時間であっても、8時間労働したこととみなされる制度です。
ガイドラインでは、テレワークにおいて次の要件①②のいずれも満たす場合には、事業場外みなし労働時間制度を適用することができると示されました。
要件 | 具体的なケース |
①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと |
・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合 ・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応対のタイミングを労働者が判断することができる場合 ・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応対を行うか否か、または折返しのタイミングについて労働者において判断できる場合 |
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと |
・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決める等作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合 |
(3)テレワークにおける中抜け時間
テレワーク(在宅勤務)である場合、労働時間中であっても、急に宅配便が来るなど、業務と日常生活が混同してしまうことがあります。このような、仕事から離れる時間(中抜け時間)をどのように取り扱うかは、会社が自由に決めることができます。ガイドラインでは、中抜け時間を把握する場合の具体例が以下の通り示されました。①終業時間を繰り下げる場合
中抜け時間分を、終業時刻後に繰り下げて労働時間とします。この場合、終業時刻を繰り下げできる旨を、就業規則へ規定しておくことが必要です。②時間単位の年次有給休暇とする場合
中抜け時間分を時間単位の年次有給休暇とします。時間単位の年次有給休暇制度を導入する場合、就業規則への規定や労使協定の締結が必要です。(4)勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間
自宅でテレワークを行ったのち、午後からオフィスに出社することがあるかと思います。このような場合、オフィスへの移動時間は、労働者による自由利用が保証されているかどうかにより、取扱いが異なります。移動時間の状態 | 移動時間の取扱い |
労働者による自由利用が保障されている状態 | 休憩時間 |
使用者が労働者に対し就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない状態 | 労働時間 |