そこで、本コラムでは、資産の取得に際して生じる「付随費用」の取扱いについて確認していきます。
減価償却資産に係る付随費用
減価償却資産の購入のために要した引取運賃や荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などは、付随費用として取得価額に含める必要があります。つまり、これらは減価償却費の計算の基礎となるため、支出した事業年度において一時に損金算入することはできません。ただし、次に掲げるような費用は、購入のために要した費用であっても取得価額に含めることなく、損金算入することができます。
・新増設に係る事業所税
・登録免許税その他登記または登録のために要する費用
・契約書に貼付する印紙代
この取扱いは、減価償却資産に限らず、土地の取得においても同様です。
(2)建物の建設等のための調査、測量、設計、基礎工事等で、その建設計画を変更したことで不要となったものに係る諸費用
(3)すでに締結した取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することとした場合に支出する違約金
(4)減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用開始までの期間の部分)
使用を開始した後の期間に係る借入金の利子は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
(5)割賦販売契約などにより購入した減価償却資産の取得価額のうち、契約上、購入代価と割賦利息や売り手の代金回収のための費用等が明らかに区分されている場合の当該利息や費用
有価証券に係る付随費用
有価証券の取得のために要した諸費用なども、付随費用として取得価額に含める必要があります。たとえば、証券会社等に支払う手数料であっても、売却手数料は取得のために要した費用ではないため、売却時に損金算入することになります。これに対し、購入手数料は付随費用として取得価額に含める必要があります。なお、有価証券を取得するために要した通信費や名義書換料については、一般的に少額となることが多いため、取得価額に含めないことができます。
また、近年、M&Aが注目を集めています。企業買収において実施されることが多いデューデリジェンスのための費用は比較的高額となりますが、M&Aが成功した際には、これらも付随費用として株式の取得価額に含まれるため注意が必要です。
棚卸資産に係る付随費用
棚卸資産についても、これを費消しまたは販売の用に供するために直接要した費用のすべてが取得価額に含まれます。なお、次に掲げる付随費用のうち、その合計額が少額(当該棚卸資産の購入代価のおおむね3%以内)の場合には、取得価額に含めないことができます。少額かどうかは、事業年度ごとに、かつ、種類等を同じくする棚卸資産ごとに判定することができます。
(1)買入事務、検収、整理、選別、手入れ等に要した費用の額、または製造等の後において要した検収、検定、整理、選別、手入れ等の費用の額
(2)販売所等または製造場等から、販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
(3)特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額
なお、(3)以外により生じる棚卸資産を保管するための費用(保険料を含みます)は、取得価額に含めないことができます。
(1)不動産取得税の額
(2)固定資産税・都市計画税の額
なお、棚卸資産の取得とは別に、固定資産として建物や土地を取得する場合に慣習的に清算される固定資産税等は、取得価額に含める必要があります。
(3)登録免許税その他登記または登録のために要する費用の額
(4)借入金の利子の額