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中小企業のパワハラ防止対策の義務化に向けて ~事業主が講ずべき措置とは~

2022年2月1日更新

人事労務News&Topics

中小企業のパワハラ防止対策の義務化に向けて ~事業主が講ずべき措置とは~

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
労働施策総合推進法の改正により、大企業では2020年6月1日からパワーハラスメント防止対策が義務づけられています。中小企業については努力義務とされていましたが、2022年4月1日からは義務化されることになります。本コラムでは、パワーハラスメント防止のために事業主が講ずべき措置について改めて解説していきます。

(1)パワーハラスメントの定義

職場におけるパワーハラスメントとは、次の3つの要素を全て満たすものをいいます。
  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
  3. 労働者の就業環境が害される場合
事業主は、パワーハラスメントを防止するため、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備その他雇用管理上必要な措置を講じければならないとされています。

(2)事業主が雇用管理上講ずべき措置

事業主は、パワーハラスメント防止のために以下の措置を必ず講じなければなりません。
  1. 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するための必要な体制整備
  3. 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. その他あわせて講ずべき措置
それぞれについて具体的にみていきましょう。

1.事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

職場におけるパワーハラスメントの内容や、パワーハラスメントを行なってはならないという旨の事業主の方針を明確にし、労働者へ周知しなければなりません。
また、行為者について、厳正に対処する方針や対処内容を就業規則等へ規定し、労働者に周知・啓発していくことも必要です。

なお、事業主の方針の周知のしかたとしては、「トップメッセージ」の作成が推奨されています。厚生労働省から、ひな形が出されていますので参考にしてみましょう。

<トップメッセージ一例>

○○年度 職場のパワーハラスメント防止に向けた取組について

本年度、より働きやすい職場を目指し、パワーハラスメントの研修を実施します。パワーハラスメントは、人権にかかわるものであり、相手の名誉や尊厳を傷つけるばかりか、職場の環境も悪化させる問題です。

そういったパワーハラスメントを発生させないために、当社は、皆さんにパワーハラスメントに関する知識を学んでもらい、より安全で快適な職場づくりを目指します。

また、当社としては、パワーハラスメントを決して許しません。見過ごすこともしません。パワーハラスメントの行為があれば、すぐに上司に相談してください。上司に相談しにくい場合は、直接私に(社内の相談窓口に)相談してください。

よりよい職場づくりを目指し、一緒に、取組を進めていきましょう。

○○年○月○日
代表取締役社長 □□□□

※あかるい職場応援団「参考資料1 トップメッセージ」(厚生労働省)を元に作成
 

2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備

パワーハラスメントについての相談窓口を設置し、労働者へ周知しなければなりません。
相談窓口は社内ではなく、社外に設置することも可能です。
社内に相談窓口を設ける場合は、担当者が相談内容等に対して適切に対応できるように体制を整備することが必要です。
相談を受けた場合の対応のしかたについて研修を行なう、留意点等を記載したマニュアルに基づき対応するなど、準備を整えておきましょう。

3.職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

パワーハラスメントの相談を受けた場合、事業主として、事実関係を迅速・正確に確認し、速やかに被害者に対する配慮のための措置を行なうとともに、行為者に対する措置を適正に行なわなければなりません。また、再発防止に向けた措置を講ずることも必要です。
厚生労働省から、相談対応の流れが例示されていますので、参考にしてみてください。

※厚生労働省パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」より抜粋

4.その他あわせて講ずべき措置

相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じることや、相談したこと等を理由に解雇やその他不利益取扱いをされない旨を定めること、それらを労働者へ周知することが必要です。


このように、パワーハラスメント防止対策の義務化にあたり、事業主として準備すべきことはたくさんあります。
厚生労働省より、対策導入マニュアルや社員への研修資料、相談受付票など、わかりやすい資料や書式が公開されていますので、こういった資料も活用しながら、社内体制や規程の整備を進めていきましょう。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

連載「人事労務News&Topics」

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