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10月から企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入要件が緩和されます

2022年9月26日更新

人事労務News&Topics

10月から企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入要件が緩和されます

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
企業型確定拠出年金は、公的年金の上乗せの給付を保障する私的年金制度の1つです。
確定拠出年金法の改正により、2022年10月から企業型確定拠出年金の加入者が、iDeCoに加入しやすくなります。

(1)「確定拠出型」と「確定給付型」

私的年金制度は、大きく分けると「確定拠出型」と「確定給付型」の2種類がありますので、まず、それぞれの用語を整理します。

○確定拠出年金(DC)とは

確定拠出年金(DC)は、拠出された掛金とその運用収益との合計額をもとに、将来の給付額が決まる年金制度です。会社や従業員が掛金を支払い、従業員自ら運用を行なうことが特徴です。
種類は、次の2つがあります。

①企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業の拠出によって行なう年金制度です。
また、拠出限度額の範囲内かつ事業主の掛金内で、従業員の拠出(マッチング拠出)も可能です。

②個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人の拠出によって行なう年金制度で、加入は任意となります。
個人型確定拠出年金の英語表記である「Individual-type Defined Contribution pension plan」を略して、iDeCo(イデコ)と称されています。

○確定給付企業年金(DB)とは

確定給付企業年金(DB)は、従業員が将来受け取れる給付額が、あらかじめ約束されている年金制度です。
会社が運用の責任を負うため、給付額に満たない場合は、会社が拠出することになります。

(2) 今回の改正内容

従来、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員がiDeCoへの加入を希望した場合、iDeCoの加入を認める企業型確定拠出年金の規約の定めが必要でした。
10月からの法改正により、この規約の定めが不要とされることで、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員が、iDeCoに加入しやすくなります。
従前 2022年10月1日より
企業型確定拠出年金加入者がiDeCoに加入するには、iDeCoの加入を認める企業型確定拠出年金の規約の定めが必要 企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入を認める企業型確定拠出年金の規約の定めは不要

(3) 掛金について注意が必要

今回の改正では、掛金について注意が必要です。
企業型確定拠出年金にのみ加入している人の掛金の拠出限度額は月額55,000円です。改正により、拠出限度額に変更はありませんが、企業型確定拠出年金の掛金とiDeCoの掛金を合算して55,000円以内となるように掛金を決める必要があります。
また、企業型確定拠出年金と確定給付企業年金に加入している人の掛金の拠出限度額は月額27,500円です。こちらも、拠出限度額に変更はありませんが、企業型確定拠出年金の掛金とiDeCoの掛金を合算して27,500円以内となるように掛金を決める必要があります。
  企業型確定拠出年金に加入している人がiDeCoに加入する場合 企業型確定拠出年金と確定給付企業年金に加入している人がiDeCoに加入する場合
企業型確定拠出年金の事業主掛金【①】 55,000円以内 27,500円以内
iDeCoの掛金【②】 20,000円以内 12,000円以内
①+② 55,000円以内 27,500円以内
なお、マッチング拠出を導入している企業の企業型確定拠出年金加入者は、マッチング拠出を利用するか、iDeCoに加入するかを選択することができます。

今回の改正は、企業型確定拠出年金を導入している企業が対象です。
対象企業の人事労務担当者の方は、従業員に対して法改正の内容、拠出限度額の範囲等を丁寧に説明し、周知していくことが必要になるでしょう。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

連載「人事労務News&Topics」

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