最近では、大学などが労働契約や有給休暇、残業代などについての法律的な説明をしていることも多いので、アルバイト先のまとめ役の社員よりも詳しいことがよくあります。
私がアルバイトをしていた頃は、自分に有給休暇があることなどを誰も教えてくれることはなく、私を含め他のアルバイトの人もまったく知りませんでした。
臨時的にアルバイトを雇用する場合は、そのアルバイトを対象とした就業規則がなく、労働契約書のみで対応するということもあるかと思います。
一方、「常時使用するアルバイトがいる」のであれば、法律的にアルバイトを対象とした就業規則が必要となります。
その際に就業規則の作り方には2つの方法があり、次の①、②のいずれかになります。
① 正社員と同じ就業規則を使う |
② アルバイト用の就業規則を作成する |
また、正社員用の就業規則の「適用範囲」の条項に、「この就業規則は、正社員にのみ適用する」と記載して、アルバイト用の就業規則の「適用範囲」の条項には、「この就業規則は、アルバイトにのみ適用する」と記載します。
アルバイトの就業規則については、今までは多く会社が②の方法で対応していました。
その理由は、正社員には一定の休暇や手当を権利として与えるが、アルバイトには与えたくないということが多かったからです。たとえば、慶弔休暇、休職制度、特別な手当などです。
①で対応した場合、正社員には与えて、アルバイトには与えない手当などの条項に、「ただし、アルバイトは除く」というような記載が必要です。そうすると、就業規則を読んだアルバイトが『正社員はいいなぁ』という気持ちになってしまうことがあります。
そのため、多く会社が②の方法で対応していたのです。
今までは、各種手当の支給等について、正社員とアルバイトで差があるのは当たり前といえましたが、働き方改革でパートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法が改正され、同一労働同一賃金が導入されました。
これにより、正社員とアルバイトという雇用形態の違いを理由として、手当や休暇などの待遇に差をつけることはできないことになりました。
たとえば、危険な作業をする際に、正社員には「危険手当」を支給していて、アルバイトが同じ作業をしても支給していなかった場合、同一労働同一賃金の観点から問題となります。
また、住宅手当の支給の意味を「住宅に対する家賃負担の補助」としているのであれば、正社員であってもアルバイトであっても支給する必要があります。
しかし、手当はその支給する“意味”が重要で、住宅手当の支給の意味が「転勤が多く、その負担の軽減のため」で、正社員は頻繁に転勤があり、アルバイトには転勤がなければ、正社員に住宅手当を支給して、アルバイトには支給しないのは問題がないことになります。
また、賞与、退職金について、正社員と有期契約社員の間で差をつけることは不合理ではないという裁判例はありますが、個別判断の1つであり、無条件に差をつけられるという判断ではないことは理解しておく必要があります。
アルバイト用の就業規則については、同一労働同一賃金の対応が進むことにより、②で対応する意味は薄れるので、今後は、①で対応していくほうが規程の作りとしてシンプルになってよいように思います。