本コラムでは、2023年4月からの改正内容について詳しく解説していきます。
(1) 改正内容
2023年4月より、常時雇用する労働者が1,001人以上の企業に対し、「男性の育児休業取得率等の公表」が義務化されます。「常時雇用する労働者」とは、正社員、有期社員、アルバイト等の名称にかかわらず、期間の定めなく雇用されている者や、過去1年以上雇用されている者または雇入れ時から1年以上の雇用が見込まれる者をいいます。
(2) 公表内容
公表する内容は、「①男性の育児休業等の取得率」または「②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率」のいずれかです。公表を行なう日の属する事業年度の直前の事業年度(これを「公表前事業年度」といいます)の取得率を毎年公表していくことになります。
すでに公表の準備を進めている企業もあるかと思いますが、具体的な取得率の算出方法等は次の通りです。
① 男性の育児休業等の取得率
公表前事業年度において配偶者が出産した男性労働者数に対する、育児休業等を取得した男性労働者数で、次の計算式により求めます。② 男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率
公表前事業年度において配偶者が出産した男性労働者数に対する、育児休業等を取得した男性労働者数と小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者数の合計で、次の計算式により求めます。(3) 実務の注意事項
決算期が3月(公表前事業年度は、2022年4月1日から2023年3月31日)の企業を例に、主な注意点を確認してみましょう。○配偶者が出産した男性労働者数
2022年4月1日から2023年3月31日の間に、配偶者が出産した男性労働者をカウントします。双子や三つ子等であっても、男性労働者数は「1人」となります。
○育児休業等を取得した男性労働者数
2022年4月1日から2023年3月31日の間に、育児休業や出生時育児休業(産後パパ育休)等を取得した男性労働者をカウントします。育児休業、出生時育児休業を2回に分割して取得した場合でも、同一の子について取得したものであれば、男性労働者数は「1人」となります。
また、事業年度をまたいで育児休業を取得した場合や、分割して複数の事業年度に育児休業を取得した場合は、「育児休業を開始した日を含む事業年度の取得」となります。
ここでは、育児休業等を取得した日数が何日以上という定義はありません。
○小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者数
就業規則等で小学校就学前の子の「育児を目的とした休暇制度」が制定されている企業が対象となり、子の看護休暇など法定の制度は除きます。2022年4月1日から2023年3月31日の間に、当該休暇制度を利用した男性労働者をカウントします。
育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合は、当該休業や休暇が同一の子について取得したものであれば、男性労働者数は「1人」となります。
また、次の図のように、子どもが産まれた日と育児休業等を取得するタイミングによっては、事業年度が異なることも実務では想定されますので、算出時に注意しましょう。
(4) 公表する方法
自社のHPや厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」など一般の人が閲覧できる方法で、公表前事業年度終了後、おおむね3か月以内に公表することが求められます。なお、本改正の適用は、決算期が3月の企業から開始となります。
<初回公表期限> |
決算期3月の場合、2023年6月末まで |
決算期4月の場合、2023年7月末まで |
決算期5月の場合、2023年8月末まで |
取得率が高いかもしれませんし、低いかもしれませんが、高いから良い、低いから悪いというものではなく、企業の経営戦略や採用戦略の1つとして本指標を用いるのもよいでしょう。
2023年4月から、従業員が1,000人を超える企業は男性労働者の育児休業取得率等の公表が必要です(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf