健康保険証の廃止後は、原則としてマイナンバーカードと健康保険証が一体となった「マイナ保険証」を使用することになります。
今回は「マイナ保険証」への移行に関して、中小企業が注意すべき点などについてお伝えします。
1.現行の健康保険証の廃止とは?
現行の健康保険証の廃止とは、2024年12月2日からは健康保険証の新規発行をやめることに加えて、健康保険証を使用できなくすることを意味します。ただし、経過措置として、廃止後も1年間は現行の健康保険証が使用できます。
2.健康保険証の廃止後は?
現行の健康保険証の廃止後は、2つの選択肢があります。1つは、マイナンバーカードと健康保険証が一体となった「マイナ保険証」への移行で、政府が推奨する方法です。
もう1つは、「資格確認書」を保険者(協会けんぽ、健康保険組合など)から発行してもらう方法です。資格確認書の有効期間は5年となります。
3.人事労務担当者が備えておくべきことは?
(1)マイナ保険証の前提としてのマイナンバーカード交付申請のアナウンス
政府が現行の健康保険証を廃止することを決定したので、時間はかかってもほとんどの方がマイナ保険証を利用する方向になるでしょう。マイナ保険証を利用するためには、マイナンバーカードの交付申請に加えて、マイナンバーカードの健康保険証としての利用の申込みが必要になります。
どちらも1回限りの行為なのですが、従業員本人によって申請や申込みがなされる必要があることにご注意ください。
マイナンバーカードの交付申請自体は任意です。そのため、企業として従業員に交付申請を義務づけるわけにはいきません。とはいえ、2023年12月末現在でマイナンバーカードの保有率は約73パーセントに達しています。
企業としては「マイナ保険証」を利用するにはマイナンバーカードの交付申請が必要だということを、2024年中に何度かアナウンスすれば大きな問題は生じないと思われます。
従業員だけでなく、従業員の配偶者や子どもに関するアナウンスも忘れずに行なうようにしてください。
(2)マイナ保険証の利用申込みに関する情報提供
問題は健康保険証としての利用で、こちらは医療機関で実際に使えなかったなどのトラブルが影響して、非常に低い利用率となっています。そのため、従業員の多くは「マイナンバーカードは保有しているが、マイナ保険証としては使用していない」という状況にあると思われます。
マイナ保険証を利用するメリットは正直なところ現時点ではまだ感じにくい面があります。
医療機関等で高額な医療費が発生する際に、高額療養費制度によって最初から自己負担額までの支払いで済ますには限度額適用認定証が必要でした。
そのステップがマイナ保険証の提出で不要になるというのは、実際にその立場になるとかなりのメリットではあります。
しかし、医療機関側がオンライン資格認定に対応している必要があるのが難点です。これも、政府が現行の健康保険証の廃止を決めたため、対応が進んでいくことでしょう。 マイナ保険証の利用申請は、マイナポータル やセブン銀行のATMから可能です。マイナポータルはPC版に加えてスマートフォン版もあるため手軽に手続きが可能です。PCやスマートフォンをお持ちでない方や操作が苦手な方は、セブン銀行のATMで簡単に申し込めます。 その際はマイナンバーカードが必要になることに加えて、「利用者証明用パスワード(4桁)」が求められます。現行の健康保険証を持参する必要はありません。利用者証明用パスワードは、マイナンバーカードを受け取った際に利用者自身が設定したパスワードです。万が一、忘れてしまった場合は、市区町村で再設定手続きが必要になります。 2024年の年末に近づくにつれて、メディアもマイナ保険証の話題を多く報じるでしょうし、従業員から人事労務担当者への問い合わせや質問が増える可能性もあります。
そのため、あくまで移行は従業員の任意ではありますが、2024年の早い段階から「マイナ保険証」の利用申込みについての説明を丁寧に行なうことをおすすめします。
その際には、現行の健康保険証の廃止後は「資格確認書」の発行を受ける方法があることもあわせて伝えるようにすれば、トラブル防止につながります。
マイナ保険証への移行に関する情報提供を先回りして行なうことで、他の人材・組織マネジメントに力を注ぐ余裕を作り出してください。