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外国人労働者の存在・活用はダイバーシティ経営の観点からも非常に重要!

2024年2月29日更新

社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」

外国人労働者の存在・活用はダイバーシティ経営の観点からも非常に重要!

[有馬美帆氏(特定社会保険労務士)    ]

1.外国人労働者の現状

厚生労働省は2023(令和5)年10月末時点での『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』 を公表しました。
外国人労働者数は約205万人で、初の200万人超えとなりました。
国籍別では、ベトナム(全体の25.3%)、中国(同19.4%)、フィリピン(同11.1%)となっています。
10年前の2013(平成25)年は、中国(全体の42.4%)、ブラジル(同13.3%)、フィリピン(同11.2%)でした。


外国人労働者の国籍別割合
2023(令和5)年 2013(平成25)年
1位 ベトナム(25.3%) 1位 中国(42.4%)
2位 中国(19.4%) 2位 ブラジル(13.3%)
3位 フィリピン(11.1%) 3位 フィリピン(11.2%)

資料出所:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

この10年で国籍別の割合が大きく変化しており、外国人労働者の4分の1をベトナム出身者が占めるようになっています。
ベトナム人労働者が増加した理由は、主に建設業や製造業での技能実習生としての受け入れ増加によるものです。
この技能実習制度は本来、人材育成による国際貢献を目的として創設されたものです。そのため早期の帰国が前提で、企業としては長期間にわたり外国人材を活用しにくいという難点がありました。
また人権侵害による失踪などの問題もあったため、政府は技能実習制度に代わる「育成就労」制度の創設を決定し、法改正が行なわれる予定です。
「育成就労」の3年間で、より高度な「特定技能1号」へと移行できるようにし、「特定技能1号」で5年間の就労が可能になるというものです。
さらに「育成就労」では、失踪問題への対応策として、技能実習で原則認められていなかった転職も条件付きで可能となります。

『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』の在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」の対前年増加率が24.2%と最も大きく、次いで「技能実習」が20.2%という結果となりました。
専門性やスキルを有した外国人労働者の活用が進み始めています。

外国人労働者は入国管理と不可分一体ですが、出入国管理政策の歴史を取り扱ったものとして、土田千愛著『日本の難民保護 出入国管理政策の戦後史』(慶應義塾大学出版会)は非常に読み応えのある一冊です。

2.外国人労働者の人材・組織マネジメント

外国人労働者は人手不足という問題を抱える日本の企業にとって重要な戦力ですが、それだけでなくダイバーシティ経営の観点からも非常に重要な存在です。
経済産業省はダイバーシティ経営の定義を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」としています。

ダイバーシティ(多様性)の重要性については本コラムでもお伝えしていますが、視点や判断の多様性を「コグニティブ・ダイバーシティ」といい、外国人材は特にこの多様性確保の点で大いに期待できるでしょう。

≫ 連載第2回:『人材を「資本」として捉える! 中小企業が「人的資本経営」を導入するための基礎知識』参照

インバウンドの増加で、国内には労働者だけでなく旅行者の外国人も増えている現在、各企業にとって「外国人の視点」「外国人の感性」を自社の製品やサービス、そして人材・組織マネジメントに取り入れる必要性は日増しに高まっているといえます。

外国人労働者の人材・組織マネジメントの詳細は改めてお伝えしますが、今回は弊所(社会保険労務士法人シグナル)が労務監査(労務デューデリジェンス)で外国人雇用についてチェックをする際のリストの一部を公開することで、コンプライアンスや外国人材活用にお役立ていただきたいと思います。
外国人雇用に関する確認項目(一部抜粋)
採用の際、「在留資格」「在留期間」を在留カードなどの資料で確認し、その後も定期的な確認を行なっているか
採用の際、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出しているか
在留資格が「留学」「家族滞在」等の場合には、資格外活動許可を確認した上で、就労可能時間の範囲内で就労させているか
外国人に対して差別的取扱いやハラスメントをしていないか
労災保険について、外国人労働者に支払われる賃金も賃金総額に算入しているか
外国人を適切に社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させているか
たとえば④などは、わが国にとってはあたりまえの文化・習慣であっても、外国人労働者にとっては不快に思えたり、差別的に感じられたりするものがあるかもしれません。
そのようなカルチャーギャップを埋めるためには、丁寧に説明して納得してもらう「対話」が欠かせません
もちろん、外国人労働者の側の文化・習慣についても「対話」のなかで理解を深めていくことも必要で、そこで獲得した多様な視点がダイバーシティ経営につながっていくはずです。
執筆者プロフィール

有馬美帆氏(特定社会保険労務士)   
社会保険労務士法人シグナル 代表社員。ISO30414リードコンサルタント。2007年社会保険労務士試験合格、社会保険労務士事務所勤務を経て独立開業、2017年紛争解決手続代理業務付記。IPO支援等の労務コンサルティング、就業規則作成、HRテクノロジー導入支援、各種セミナー講師、書籍や雑誌記事、ネット記事等の執筆を中心に活動。著作として、『M&A労務デューデリジェンス標準手順書』(共著、2019年、日本法令)、『起業の法務-新規ビジネス設計のケースメソッド』(共著、2019年、商事法務)、『IPOの労務監査 標準手順書』(共著、2022年、日本法令)など。

連載「社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」」

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