中小企業の人材・組織マネジメントに、ダイバーシティという考え方を取り入れることを検討されている経営者や人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ダイバーシティとは何かのご説明と、ダイバーシティ経営推進のメリットを中心にお伝えします。
1.ダイバーシティとは?
まず、基本となる「ダイバーシティ」とは、日本語で「多様性」を意味します。人材・組織マネジメントの観点からは、組織内に異なる属性や特徴を有するメンバーが共存している状態と言うこともできるでしょう。
このダイバーシティ(多様性)は、さまざまな視点から分類することができます。
以下にその例をご紹介します。
種類 | 概要 |
コグニティブダイバーシティ | 認知、判断、問題解決のアプローチなどの多様性 |
デモグラフィックダイバーシティ | 属性(年齢・性別・国籍・民族)などの多様性 |
フィジカルダイバーシティ | 身体的特性(障害の有無など)や能力の多様性 |
文化的ダイバーシティ | 文化や習慣、価値観などの多様性 |
ジェンダーダイバーシティ | 性別(男性・女性・その他)に関する多様性 |
エイジダイバーシティ | 年齢や世代に関する多様性 |
パーソナリティダイバーシティ | 性格(内向的・外交的)や行動スタイルの多様性 |
ファンクショナルダイバーシティ | 職務や役割、専門分野、経験などに関する多様性 |
たとえば、「性別」は「性自認」などの要素も影響しますので、外見(身体的特徴)だけでは判断がつけられない要素です。
さらにLGBTQ等の「多様な性のあり方」という観点もありますので、まさに多様性そのものです。
いろいろとありすぎて頭が混乱しそうですが、各種の多様性については無理に覚えようとせず、折に触れて見返していただければ、自然と理解が進むと思います。
その際に注意していただきたいことは、ご紹介した各種のダイバーシティ(多様性)は、それぞれが完全に独立したものではなく、重なり合う場合もあることです。
たとえば、デモグラフィックダイバーシティは人口統計学的な多様性のことで、そこには先ほどの性別(特に戸籍上の性別)が含まれますが、性別は同時にジェンダーダイバーシティの要素でもあります。
さらに、LGBTQ等の多様な性によって「ものの考え方」の違いが生まれるならば、それはコグニティブダイバーシティや文化的ダイバーシティの話となります。
この「重なり合い」の感覚をつかむことも、ダイバーシティの理解に必要だと考えます。
2.ダイバーシティ経営とは?
このダイバーシティという観点を経営に取り入れるのが「ダイバーシティ経営」です。経済産業省は、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義づけています。
≫ 経済産業省:『ダイバーシティ経営の推進』 参照
ダイバーシティ経営のメリットとしては、以下の3点が主なものとして挙げられます。
(1)創造性とイノベーションの向上
多様な属性の人々が組織に集まることで、経営問題の解決や商品・サービスの開発についての新たなアイデアやアプローチが生まれやすくなり、イノベーションを生み出すことで、企業の競争力を向上させることが期待されています。(2)従業員のエンゲージメントの向上
多様性を尊重する組織は、従業員一人ひとりが個性を尊重されているという意識や心理的安全性(自分の考えを安心して発言できる状態)を高めることにもつながります。それらによって、従業員のエンゲージメント(仕事や企業に対する意欲や絆)の向上も期待されます。
(3)コンプライアンスと社会的評価の向上
女性や高齢者、障害者などについては、法令で雇用に関する配慮が求められています。組織の多様性の実現を目指すためには、これらの法令遵守(コンプライアンス)が欠かせないだけでなく、積極的な人材採用、人材活用を行なうことは企業の社会的責任(CSR)を果たすことになり、社会的評価の向上にもつながります。
これらダイバーシティ経営のメリットを発揮させるために、経営者や人事労務担当者の方が具体的にどのように取り組めばよいのかについては、改めてお伝えします。