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外国人材の「育成就労制度」が新設!主な改正ポイントを解説

2024年7月11日更新

人事労務News&Topics

外国人材の「育成就労制度」が新設!主な改正ポイントを解説

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
技能実習に代わる新たな在留資格「育成就労」の創設などを盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が先の通常国会で成立し、2024年6月21日に公布されました。
本コラムでは、主な改正ポイントを解説します。

(1)制度の見直しイメージ

これまで約30年続いていた技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を導入することが決まりました。
施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日、つまり2027年6月までに施行されることになります。


*厚生労働省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」参照

(2)制度見直しの背景

日本の労働力人口は、年間100万人ペースで減少しており、深刻化の一途をたどっているなか、技能実習生・特定技能外国人が重要な担い手となっているのが実態です。
しかしながら、「技能実習制度」の目的は国際貢献であり、資格要件が不要であったこともあって、キャリアパスが不明瞭、労働者としての権利保護が不十分、不適正な送出等、様々な課題が挙がっていました。
また、国際的な人材獲得競争においても、近隣の台湾・韓国では低熟練外国人労働者の受入れを拡大するなど、これらの国との競争激化で日本は相対順位が低下傾向にあり、外国人材の受入制度の見直しが迫られていたことが背景として挙げられます。

(3)育成就労制度とは

外国人に魅力のある制度で日本が「選ばれる国」となるために、技能実習制度の大幅な見直しが行なわれました。

(4)目的について

技能実習制度の目的は、労働ではなく「国際貢献」であるため、日本や各産業分野を勉強するために来ている外国人が多かったのではないでしょうか。
今回の改正では、労働者本人の能力を高める「キャリア形成」に重点を置いていて、原則3年間の就労を通じ、特定技能レベルの人材を育成することを掲げています。
特定技能は「労働」することが目的であり、育成就労を経て特定技能の在留資格が認定されると、日本で8年間就労できることになります。

(5)労働者としての権利向上について

技能実習制度では、転籍を認めていなかったこともあり、技能実習先が合わない等の問題があると失踪問題へ発展することも課題として挙がっていました。
今回の改正により、転籍を緩和する内容を設け、外国人に安心して就労を続けてもらうための対策が講じられています。

○「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大し、手続きを柔軟にすること

○以下を要件に、同じ業務区分内で本人意向による転籍を認めること

*同一機関での就労が1~2年を超えていること

*技能検定試験基礎級等と一定水準の日本語能力に係る試験への合格

*転籍先が、適切と認められる一定の要件を満たしていること

今回の改正は、外国人のキャリア形成について考えさせられる内容になっています。
これまで「外国人労働者だからこの仕事」というように日本人と区別してきた、または区分せざるを得ない会社もあったかと思います。
しかし、今回の改正が目指す「従業員にお願いする仕事は、本人の能力を向上するための仕事であるか?」という問いかけは、外国人も日本人も同じ一人の労働者であり、一人ひとりの労働力を大切にしていくことがより求められる時代になったと感じますね。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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