≫ 連載第21回:『ダイバーシティ経営とは?その① 推進のメリット』参照
今回は、ダイバーシティ経営を推進する場合のポイントをお伝えします。
1.「経営者自身のダイバーシティ」実現こそ最重要課題
ダイバーシティ経営というと、従業員の多様性ばかりに目が向いてしまいがちですが、経営者あるいは経営陣の多様性にも目を向ける必要があります。経営者に求められる多様性のうち最たるものは、やはりコグニティブダイバーシティ(認知、判断、問題解決のアプローチなどの多様性)でしょう。
「多様なものの考え方」を経営者の方々が身につけることは、VUCA(不確実性)の時代において活路を切り拓くヒントを見つけるために欠かせません。
その際に、前回ご説明したように多様な人材を揃えて、積極的に「対話」を積み重ねることは、多様な視点の獲得にもつながるはずです。
いわゆるZ世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた、デジタルネイティブとも呼ばれる世代)が、企業の若手人材の中心となりつつあります。
このZ世代の若手人材が持つ特徴の1つして、自分らしさを求めつつ、多様性も重視しているという点があります。
中小企業の人材・組織マネジメントにおいて、人手不足の中で若手人材をどう採用し、活用していくかは、企業の未来を大きく左右する問題です。
多様性を重視する若手人材を惹きつけるための第一歩として、経営者自身のダイバーシティを実現していくことが何よりも重要です。
2.「女性活躍推進」はダイバーシティ経営の中心課題
マネジメント層のダイバーシティも追求すべき課題ですが、まず取り組むべきなのは「マネジメント層での女性活躍」でしょう。人的資本に関する情報開示のガイドラインであるISO30414でも、労働力のダイバーシティに関して「性別」という項目が設けられています。
≫ 連載第20回:『ISO30414を活用して、中小企業も人的資本経営を推進!』参照
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は12.7%と低い数値になっています。
さらに、部長相当職の女性がいる企業の割合は12%で、およそ9割の企業には女性の部長が存在しません。
政府の「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024(女性版骨太の方針2024) 」でも、冒頭に「企業における女性の採用・育成・登用の強化」が掲げられているということは、それだけ女性活躍が進んでいないということの表れでもあります。
この現状を踏まえて、女性のマネジメント層への登用にいち早く動くことは、ダイバーシティ経営推進だけでなく、人手不足の中で女性の人材確保に向けた大きなアピールになります。
これまでマネジメント層に女性が存在しなかった企業の場合は、『はじめてリーダーになる女性のための教科書 』(深谷百合子著/日本実業出版社刊)などを参考に、女性管理職の登用、育成を推進されることをおすすめします。
3.「多様性以外の要素」にも視野を広げることが重要
さらに、多様性以外の要素にも視野を広げていただきたいと思います。企業に多様な人材を揃えれば、それだけで経営効果が発揮されるわけではありません。
「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」あるいは「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」という言葉があります。
ダイバーシティはエクイティ(公正性)やインクルージョン(包摂性)という言葉とセットで語られるように、多様な人材に対して、公正であることや違いをできるだけ受け入れる姿勢が、企業や経営者には求められます。
ダイバーシティ(多様性) | 多様性そのもの。または多様な人材を活用して企業価値向上を図ること |
エクイティ(公正性) | 一人ひとりの違いに応じた公正かつ実質的に平等な取扱いをすること |
インクルージョン(包摂性) | 多様な人材がそれぞれ尊重されつつ協働がなされるよう配慮すること |
経営者が多様な従業員と折に触れて対話を積み重ね、その成果をトラブル予防あるいは解決に反映させることは、ダイバーシティ経営の実現に欠かせないステップになるのです。