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2025年4月から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されます

2024年8月13日更新

人事労務News&Topics

2025年4月から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されます

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
2025年4月から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されます。
本コラムでは、高年齢雇用継続給付金の制度と改正内容などについて解説します。

(1)高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付(以下、「給付」といいます)は、60歳以上65未満の雇用保険被保険者が以下の要件を満たし、60歳到達時点に比べて、支給された賃金が75%未満に低下した場合に支給されます。
<具体的な要件>
①60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
②雇用保険の「被保険者であった期間」が通算して5年以上あること
※被保険者であった期間は、離職した日の翌日から再就職した日の期間が1年以内であり、かつ、この期間に失業手当等を受給していない場合に通算できます。
③原則、60歳時点の賃金(賃金月額)と比較して、60歳以後の賃金が75%未満であること
※「賃金月額」とは、原則、60歳到達時点の直前の完全賃金月6か月の間に支払われた賃金の総額を180で除して算定された賃金日額の30日分の額となります。
「60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金が75%未満」とは、たとえば、60歳時点の賃金が30万円であった場合、その後、支給された賃金が22.5万円より下がると、30万円の賃金と比較して「75%未満」に下がる状態となります。
この60歳時点と比べて賃金が下がる率を「低下率」といい、低下率に応じて給付額は以下のとおり計算されます。
75%以上の場合 支給されない
61%超75%未満の場合 実際に支払われた賃金額×支給率(0%~15%未満)
61%以下の場合 実際に支払われた賃金額×15%
なお、支給限度額があり、60歳以後に支給された賃金額が376,750円以上の場合は、給付されません。

(2)改正の概要

2025年4月以降に60歳に達した日を迎え、高年齢雇用継続給付金の支給を受ける場合、低下率、支給率が以下のとおり改定されます。
75%以上の場合 支給されない
64%超75%未満の場合 実際に支払われた賃金額×支給率(0%~10%未満)
64%以下の場合 実際に支払われた賃金額×10
たとえば、60歳時点の賃金(賃金月額)が400,000円で、60歳以後に支払われた賃金が240,000円だった場合、低下率は60%となり給付の対象となります。
この場合の現在と改正後のルールによる支給額の変化は以下のとおりです。
【現在の支給額】
240,000円×15%=36,000円

【改正後の支給額】
240,000円×10%=24,000に減額!
ここで押さえておくべきポイントは、現在給付を受けている人の支給率は変わらず、2025年4月以降に新たに60歳となって給付金の対象になる人から支給率が下がるということです。

(3)今後にむけて

これまで定年後再雇用制度における賃金設計は、定年を理由として、労働日数、責任の程度、業務範囲等の労働条件を変更することで賃金が改定できる仕組みを作り、そのうえで給付金により補てんする設計としてきた会社も多いでしょう。
高年齢雇用継続給付金は段階的に縮小され、時期は未定ですが、今後廃止されることが決まっています。

人生100年時代を迎えるなか、意欲のある高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の構築が求められています。
そうした社会において、高年齢者の働き方を見直すタイミングがきていると感じます。
高年齢者が持つ自社のノウハウ、磨き上げた技術を「伝承する仕組み」を構築するために、人事戦略のひとつとして、人事制度の見直しをされてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

連載「人事労務News&Topics」

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