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中小企業がとるべきカスタマーハラスメント対策とは

2024年9月10日更新

人事労務News&Topics

中小企業がとるべきカスタマーハラスメント対策とは

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
厚生労働省では、令和2年10月に職場のハラスメントに関する実態調査を行ない、過去3年間のハラスメントの相談内容として、パワハラ、セクハラに続いて「カスタマーハラスメント」が多いことを調査結果として挙げています。
メディアなどで話題となるカスタマーハラスメントについて、対応策などを解説していきます。

(1)カスタマーハラスメントとは

「カスタマーハラスメント」とは、法的には定義されていない言葉です。
法的な定義はありませんが、カスタマーハラスメントに対し、事業主は相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮を行なうことが望ましい旨が、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての方針」(令和2年厚生労働省告示第5号)に定められています。また、労働契約法には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」という安全配慮義務が定められているため、従業員の心身を守るためにも、カスタマーハラスメント対策を行なうことが求められます。

では、カスタマーハラスメントとは、どのようなことを指すのかというと、以下のように考えられています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

(2)カスタマーハラスメントの該当行為

カスタマーハラスメントとして、以下のような行為が挙げられています。
行為 該当行為例
時間拘束型 長時間の電話など、顧客が正当な理由なく長時間にわたり従業員を拘束する
リピート型 正当な理由なく、顧客が何度も電話したり、来店したりする
暴言型 大声、言葉遣いが荒い言い方、侮辱的な言葉
暴力型 暴力をふるう行為
威嚇・脅迫型 「SNSに動画をまきちらすぞ」、「口コミで悪く評価するぞ」など脅しの言動
権威型 威張りちらす行為
店舗外拘束型 カフェなどに呼びつけて拘束すること
SNS等による誹謗中傷型 インターネット上に対応者の画像、動画などを掲示すること
セクシュアルハラスメント型 性的な言動により身体的、精神的に苦痛を感じさせること
会社の対応策としては、どのような行為をカスタマーハラスメントと定義するかの判断基準を設け、そのうえで、お客様にどういう対応をしていくかを明確にすることが必要になります。

(2)カスタマーハラスメント対策として行なうべきこと

カスタマーハラスメント対策としては、以下の取組みをするとよいでしょう。
まず、とても重要になるのは、カスタマーハラスメントに対する「①事業主の基本方針」です。
お客様との向き合い方について、会社の方針が定まらないことには、従業員としても行動の仕方がわかりませんので、まず軸を作ることから始めましょう。


そのうえで、②のカスタマーハラスメントに対する判断基準を明確にすることも重要です。
これは、会社によってお客様との向き合い方が異なりますので、カスタマーハラスメントと捉える判断基準も会社ごとに異なることになります。
たとえば、「クレーム対応」についての基準作りとして、商品・サービスに問題がない場合、「20分」を目安に判断を行なうというルールが考えられます。
また会社によっては、お客様と十分に話し合いをするため、時間の判断は行なわないというのも、1つのルールでしょう。
判断基準を明確にしたうえで、従業員の相談体制・教育体制をしっかり構築していきましょう。

(4)カスタマーハラスメント対策の必要性

カスタマーハラスメントを防止する取組みがなぜ必要なのかというと、何よりも大切な従業員の職場環境を改善し、より働きやすい職場をつくることに繋がるからです。
それでなくとも、人材確保が難しいこの時代のなかで、従業員を守る行動を示せる組織がより求められていくと思います。
昨年、労災認定基準にカスタマーハラスメントが追加されています。
以前のコラムもあわせてご確認のうえ、自社にあったカスタマーハラスメント防止策を作ってみてはいかがでしょうか。

≫ 人事労務News&Topics :『精神障害の労災認定基準に「カスタマーハラスメント」が追加
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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