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「人的資本経営」におけるKPI設定 その④ 「えるぼし」認定を目指して

2024年11月29日更新

社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」

「人的資本経営」におけるKPI設定 その④ 「えるぼし」認定を目指して

[有馬美帆氏(特定社会保険労務士)    ]
前回は人的資本経営におけるKPI設定の具体例として、「くるみん」認定についてご説明しました。
今回は女性活躍推進法に基づく、「えるぼし」認定についてお伝えします。

1.わが国における女性活躍の現状と課題

女性活躍推進法(女活法)の正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。
「職業生活」とあるように、女性がワークキャリアにおいてその個性と能力を十分に発揮できるようにすることを目的とした法律です。
同法では、企業(事業主)も女性活躍の推進に責務を負うとしています。

女性活躍推進については、本コラムでも以前触れましたが、中小企業の人材・組織マネジメントにおいても女性活躍推進は年々重要性を増しています。
≫ 連載第10回:『女性活躍の推進 人事労務管理の改善を続けて、「昭和からの宿題」に答えを出しましょう!』参照

その際に、人的資本経営におけるKPI設定の一つとして、女性活躍推進企業の証である「えるぼし」認定を目指すことをぜひご検討いただきたいと思います。

2.「えるぼし」認定とは?

女性活躍推進法に基づき、一般事業主行動計画の策定・届出を行なった企業(事業主)のうち、その取組みへの状況が優良であるなどの一定の条件を満たした場合に、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の「えるぼし」認定を受けることができます。

この認定を受けた事業主は、「えるぼし」という認定マークを商品や広告などに使用することができ、優秀な人材の確保や企業イメージ向上に活用することができるのです。

一般事業主行動計画については前回のコラムを参考にしていただきたいのですが、自社の女性活躍に関する状況把握、課題分析を踏まえたうえで、(1)計画期間、(2)数値目標、(3)取組み内容、(4)実施時期などを定めます。
≫ 連載第25回:『「人的資本経営」におけるKPI設定 その③ 「くるみん」認定を目指して』参照

策定義務は常用労働者101人以上の企業に課せられていますが、100人以下の企業も努力義務が課せられており、一般事業主行動計画を策定して「えるぼし」認定を受けることは可能です。

「えるぼし」認定を受けるための基準を簡単にご説明します。
「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準が設定されており、その基準を満たした数に応じて、認定の段階が上がっていく仕組みとなっています。
いずれの段階も、それぞれの基準を満たしたうえで、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが求められます。
認定の種類 認定の基準
(1)えるぼし
(1段階目)

一つ星
5つの基準のうち1つまたは2つの基準を満たし、満たさない基準についても事業主行動計画策定指針に定められた取組みの中から当該基準に関連するものを実施し、2年以上連続してその実績が改善されていることが求められます。
(2)えるぼし
(2段階目)
☆☆
二つ星
5つの基準のうち3つまたは4つの基準を満たすことが求められます。満たさない基準への対応については、1段階目と同様です。
(3)えるぼし
(3段階目)
☆☆☆
三つ星
5つの基準すべてを満たすことが求められます。
(4)プラチナえるぼし 「えるぼし」認定を受けた企業(事業主)のうち、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に認定されます。
2024年9月末現在で「えるぼし」認定企業は約3,040社、「プラチナえるぼし」認定企業は68社となっています。
総務省統計局の「令和3年経済センサス-活動調査 」によると、企業等の数は368万企業ですので、「えるぼし」認定を受けている企業はごく一部にとどまっています。
その分だけ、認定を受けたときは大きなアピール材料となりますし、何より女性活躍という人的資本経営にとって欠かせないKPIを達成できている証明となります。

3.KPI設定の参考となる5つの基準

最後に、「えるぼし」認定に関する5つの基準について、その概要を紹介しておきます。
評価項目 主な基準値(実績値)

(1)採用

男女別の採用における競争倍率が同程度であることなど

(2)継続就業

直近の事業年度において、女性労働者の平均勤続年数が雇用管理区分ごとに男性労働者の7割以上であることなど

(3)労働時間等の働き方

雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働と法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとにすべて45時間未満であること

(4)管理職比率

直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であることなど

(5)多様なキャリアコース

直近の事業年度において、大企業は2項目以上(非正社員がいる場合は必ずAを含むこと)、中小企業については1項目以上の実績を有すること

A 女性の非正社員から正社員への転換

B 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換

C 過去に在籍した女性の正社員としての採用

D おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用

これらの基準は、一般事業主行動計画を策定しなくても、あるいは「えるぼし」認定を目指さなくても、女性という人的資本への投資に関するKPI設定において非常に参考となるものです。
できれば、多くの中小企業がこの5つの基準を満たして「えるぼし」認定を受けていただきたいと思います。
執筆者プロフィール

有馬美帆氏(特定社会保険労務士)   
社会保険労務士法人シグナル 代表社員。ISO30414リードコンサルタント。2007年社会保険労務士試験合格、社会保険労務士事務所勤務を経て独立開業、2017年紛争解決手続代理業務付記。IPO支援等の労務コンサルティング、就業規則作成、HRテクノロジー導入支援、各種セミナー講師、書籍や雑誌記事、ネット記事等の執筆を中心に活動。著作として、『M&A労務デューデリジェンス標準手順書』(共著、2019年、日本法令)、『起業の法務-新規ビジネス設計のケースメソッド』(共著、2019年、商事法務)、『IPOの労務監査 標準手順書』(共著、2022年、日本法令)など。

連載「社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」」

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