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アルコール・ハラスメントについて

2024年12月10日更新

人事労務News&Topics

アルコール・ハラスメントについて

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進しています。
12月は、忘年会シーズンであり、お酒の席も増えてくるのではないでしょうか。
そこで今回は、アルコール・ハラスメントについて解説していきます。

(1)アルコール・ハラスメントとは

アルコール・ハラスメント(以下、「アルハラ」といいます)とは、「飲食にまつわる人権侵害のこと」を指し、法的には定義されていない言葉です。
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)では、アルハラの定義5項目を次のように示しています。
①飲酒の強要
②イッキ飲ませ
③意図的な酔いつぶし
④飲めない人への配慮を欠くこと
⑤酔ったうえでの迷惑行為

(2)具体的な行為について

①飲酒の強要

飲酒の強要は、上下関係・部の伝統・集団によるはやしたて・罰ゲームなどといった形で心理的な圧力をかけ、飲まざるを得ない状況に追い込むことをいいます。
最近は、「俺の酒が飲めないのか」という上司はあまりいないかもしれませんが、「お酒が飲めない」と断っているにも関わらず、「少しくらい、いいじゃないか」と飲ませる行為や、お酒が飲める人であっても「今日は理由があってお酒飲めない」と断っているにも関わらず、無理に飲ませる行為などが該当します。

②イッキ飲ませ

イッキ飲ませは、場を盛り上げるために、イッキ飲みや早飲み競争などをさせることをいいます。
職場の飲み会では、「イッキコール」はないかもしれませんが、イッキコールがなくても無言の圧力で早飲みをさせれば該当します。

③意図的な酔いつぶし

意図的な酔いつぶしは、酔いつぶすことを意図して飲み会を行なうこと、意図して飲むスピードを速めて酔いつぶすことなどをいいます。
嫌いな上司を酔いつぶそうとしてお酒を濃くすることなども該当します。

④飲めない人への配慮を欠くこと

飲めない人への配慮を欠くとは、本人の体質や意向を無視して飲酒をすすめる、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、飲めないことをからかったり侮辱したりするなどをいいます。
たとえば、「ちょっとくらい飲めないの?」などと本人の意思を無視してお酒を無理にすすめることや、「顔真っ赤だよ」「○○さんはお酒飲めないものね」などと飲めないことをからかうような行為が該当します。

⑤酔ったうえでの迷惑行為

酔ったうえでの迷惑行為は、酔ってからむこと、悪ふざけ、暴言・暴力、セクハラ、その他のひんしゅく行為をいいます。
たとえば、怒り上戸、説教上戸など度が過ぎれば迷惑行為になります。

(3)お酒に関する法律

あまり知られてはいないかもしれませんが、お酒にまつわる法律の一つに「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」というものがあります。
「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない」とあり、節度のある飲酒について努力義務が全国民に課されています
また、罰則として、酩酊者が公衆に迷惑をかけるような乱暴な言動をした場合は、拘留または科料に処されます。


「飲みニケーション」という言葉もあるように、お酒は上手に付き合えば人間関係を円滑に回すツールにもなります。
一方、一線を超えるとアルハラにもなり得ます。
まず、自分は「アルコールを飲むとどうなるのか」を自覚したうえで、お酒が飲めない人への配慮を忘れず、飲める人も飲めない人も楽しくお酒の席を過ごせるようにしましょう。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

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