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2025(令和7)年の注目すべき法改正の概要

2024年12月27日更新

社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」

2025(令和7)年の注目すべき法改正の概要

[有馬美帆氏(特定社会保険労務士)    ]
本コラムも3度目の年末を迎えることとなりました。
そこで今回は来たる2025(令和7)年において、中小企業が対応すべき法改正のうち、特に注目すべきものの概要についてお伝えすることで、来年の「人材・組織マネジメント」にぜひお役立ていただきたいと思います。

1.改正育児・介護休業法、改正次世代法

2025(令和7)年の法改正事項はいずれも重要ですが、その中でも最重要ともいえるのが、改正育児・介護休業法への対応でしょう。
改正内容が育児・介護の両面で多岐にわたることだけでなく、施行日が4月1日、10月1日の2回に分かれています。
改正点を理解したうえで、労使協定の締結や就業規則の改定、書式の整備などの対応を要します。
次に改正事項をまとめておきます。
改正育児・介護休業法
2025(令和7)年4月1日から施行
子の看護休暇が「子の看護等休暇」に
所定外労働の制限が「小学校就学前の子を養育」まで拡大
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加
3歳未満の子の育児のためのテレワーク導入(努力義務)
介護休暇の継続雇用期間6か月未満除外規定の廃止
介護離職防止のための雇用環境整備の義務
介護離職防止のための個別周知・意向確認等の義務
介護のためのテレワーク導入(努力義務)
育児休業取得状況の公表義務適用拡大
2025(令和7)年10月1日から施行
柔軟な働き方を実現するための措置
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
改正育児・介護休業法と同時に、次世代育成支援対策推進法(次世代法)も改正されました。
次世代法については、前々回のコラムで常用労働者101人以上の企業は「一般事業主行動計画」を策定する必要があることをお伝えしました。
≫ 連載第25回:『「人的資本経営」におけるKPI設定 その③ 「くるみん」認定を目指して』参照

今回の改正では、その一般事業主行動計画に、次の事項に関する状況の把握・分析をしたうえで、数値目標を設定することが求められます。
改正次世代育成支援対策推進法
2025(令和7)年4月1日から施行
一般事業主行動計画策定時(常用労働者101人以上の企業)
男性の育児休業取得状況や労働時間の把握
育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定

2.高年齢者雇用安定法の経過措置終了

高年齢者雇用安定法(高年法)は現在、65歳までの雇用確保を義務づけています。
その詳しい内容や人的資本経営への反映については以前のコラムでお伝えしましたが、(1)定年年齢の65歳への引き上げ、(2)希望者全員を対象とした65歳までの継続雇用制度、(3)定年制の廃止のいずれかの導入が必須となります。
≫ 連載第11回:『定年後再雇用者の「働きがい」は人的資本経営の重要課題!』参照

ただし、(2)の継続雇用制度については経過措置が認められてきました。
その経過措置とは、2013(平成25)年3月31日までに、労使協定で継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、その基準に基づいて対象者を限定できたというものでした。
この経過措置が2025(令和7)年3月31日をもって終了となるため、4月1日からは原則どおり希望者全員を対象とする必要があります。
この機会に自社の高年法対応を改めて確認されることをおすすめします。

3.改正雇用保険法

改正雇用保険法も4月1日、10月1日の2度にわたって施行されます。
こちらも改正内容が多岐にわたります。
改正雇用保険法
2025(令和7)年4月1日から施行
自己都合退職者が教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限解除
就業手当の廃止と就業促進定着手当の給付上限引き下げ
育児休業給付に係る保険料率引き上げ等
教育訓練支援給付金の給付率引き下げ(基本手当の60%に)
雇止めによる離職者の基本手当の給付日数特例の延長等
「出生後休業支援給付」「育児時短就業給付」の創設
子ども・子育て支援特別会計の創設
高年齢雇用継続給付の給付率引き下げ(15%から10%に)
2025(令和7)年10月1日から施行
「教育訓練休暇給付金」の創設
今回は中小企業の「人材・組織マネジメント」に特に活用可能な項目についての説明にとどめ、その他の事項については別の機会にお伝えします。

2025(令和7)年4月1日改正で新設される「出生後休業支援給付」とは、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付することで、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へ引き上げるというものです。
これは「共働き、共育て」、つまり夫婦ともに働き、育児を行なうことの推進を目的としたもので、特に男性の育児休業取得推進を目指したものです。

同じく4月1日改正で新設の「育児時短就業給付」は、被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合の新たな給付です。
給付率は時短勤務中に支払われた賃金額の10%となります。

2025(令和7)年10月1日改正で新設される「教育訓練休暇給付金」は、これまで企業の従業員が教育訓練に専念するために仕事から離れる場合に、その訓練期間中の生活を支援する公的な仕組みがなかったことから設けられたものです。
教育訓練休暇給付金
対象者 雇用保険被保険者
支給要件

①教育訓練のための休暇(無給)を取得すること

②雇用保険の被保険者期間が5年以上あること

給付内容 離職した場合に支給される基本手当の額と同じ
給付日数は被保険者期間に応じて、90日・120日・150日のいずれか
以前のコラムで、「中小企業がリスキリングに向き合うには?」というテーマについてお伝えしました。
≫ 連載第19回:『中小企業がリスキリングに向き合うには?費用確保と人材流出対策に取り組みましょう!』参照

教育訓練休暇給付金の新設は、その大きな支援となることでしょう。
もちろん、従業員が休暇を取得するということは、代替人員の確保などの問題が生じます。
しかし、自社の人材が自発的に本格的なリスキリングに取り組み、その学びを復帰後に評価する仕組みを整えれば、人材育成、人材確保、そして企業の成長という成果が得られるはずです。

法改正が続き、対応を迫られる1年となりますので、情報をしっかりキャッチして組織づくりに活かしてください。
執筆者プロフィール

有馬美帆氏(特定社会保険労務士)   
社会保険労務士法人シグナル 代表社員。ISO30414リードコンサルタント。2007年社会保険労務士試験合格、社会保険労務士事務所勤務を経て独立開業、2017年紛争解決手続代理業務付記。IPO支援等の労務コンサルティング、就業規則作成、HRテクノロジー導入支援、各種セミナー講師、書籍や雑誌記事、ネット記事等の執筆を中心に活動。著作として、『M&A労務デューデリジェンス標準手順書』(共著、2019年、日本法令)、『起業の法務-新規ビジネス設計のケースメソッド』(共著、2019年、商事法務)、『IPOの労務監査 標準手順書』(共著、2022年、日本法令)など。

連載「社会保険労務士が提案する中小企業の「人材・組織マネジメント」」

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