最終更新日:2024年9月27日
健康診断の実施は、労働安全衛生法により事業主の義務とされています。その実施を怠った場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
また、健康診断を受診しないことが原因で労働災害が発生してしまったような場合には、従業員から賠償等を請求される可能性があります。
会社の人事・労務担当者としては、従業員が確実に健康診断を受診するための啓発、環境の整備等を行なうことが重要です。
(1)労働者の健康診断の受診義務
労働安全衛生法は、事業主に対する健康診断の実施義務と同時に、労働者に対しても受診義務を課しています。
労働者の健康診断の受診義務に関して、労働安全衛生法66条5項では、次のように規定しています。
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
このように、法律上、健康診断の受診については、労働者の義務とされています。
(2)労働者の「医師選択の自由」
労働安全衛生法は、健康診断の受診を労働者の義務としている一方で、労働者に対し、事業主の指定以外の医師による健康診断を受けることができる「医師選択の自由」を与えています(上記の労働安全衛生法66条5項ただし書参照)。
具体的には、事業主が指定した医師による健康診断の受診を希望しない場合は、別の医師による健康診断を受けて、その結果を事業主に提出することが認められています。
何らかの事情で、会社の健康診断を受けたくないという人がいるかもしれません。その場合は、この「医師選択の自由」のルールにより、従業員のかかりつけ医等の他の医師の健康診断を受診のうえ、その結果を会社に提出してもらいましょう。
(3)就業上の措置・配慮等
従業員に健康診断を受診しない理由を問いただすと、多くの場合、「忙しくて受診する時間がない」という答えが返ってくるのではないでしょうか。
忙しいことは事実としても、健康診断の時間をいつまでも確保できないということはないはずです。
このような場合、単に「健康診断を受診してください」とお願いするだけでは、ズルズルと受診が先延ばしにされ、結局、うやむやになってしまいかねません。
本人任せにするのではなく、会社側が就業時間内に受診できるような配慮(業務量の調整等)を行ない、確実に受診させることが必要です。
(4)懲戒処分等
労働者の健康診断の受診義務は、事業主の実施義務とは異なり、法律上、罰則が定められているわけではありません。
しかし、健康診断の受診を拒否した場合は、就業規則等の定めに基づいて、懲戒処分の対象とすることは可能です。
ただし、懲戒処分は合理的かつ妥当なものでなければなりませんから、慎重に処分の内容(程度)を検討する必要があります。