最終更新日:2024年10月25日
(1)2023年の労災の発生状況
厚生労働省が取りまとめた2023年の労災の発生状況によると、新型コロナへのり患によるものを除いた死傷者数(死亡・休業4日以上)は135,371人で、2022年より3,016人(2.3%)増加しました(通勤中に発生した災害件数は含みません)。
死傷者数が多い業種のトップ3は、(1)製造業:27,194人(前年比500人増)、(2)商業:21,637人(同29人減)、(3)保健衛生業:18,786人(同1,549人増)です。
死傷災害の内訳を見ると、つまずきなどによる「転倒」が36,058人、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が22,053人、高所からの「墜落・転落」が20,758人などとなっています。
ちなみに、2023年の新型コロナへのり患による労災の死傷者数は33,637人(前年比122,352人減)となりました。
(2)年末に向けての労災事故等の防止
これから年末年始にかけては、社内や取引先との間での酒席やイベント等が多くなる時季ですが、忘年会への参加と労災の関係が話題になることがあります。
労災(業務災害)とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡をいいます。そして、労災か否かの判断に際しては、次の2点が重要なポイントになります。
1.業務遂行性 |
業務中に生じた傷病であるかどうか |
2.業務起因性 |
業務と傷病の間に一定の因果関係があるかどうか |
労災と認められるためには、業務起因性がなければならず、その前提条件としての業務遂行性も認められなければなりません。
業務起因性と業務遂行性が認められれば、忘年会に参加中のケガであっても労災となります。要するに、「忘年会への参加が仕事」であり、そのうえで「その仕事に起因するケガ」である場合には、労災になるということです。
これまでの労災認定例や判例等を見ると、忘年会への参加が「仕事」として認められるかは、次のような点が判断の要素となっています。
・参加について明確な業務命令があること
・業務との関連性があること
・参加中の賃金が支払われていること
・費用が会社から支出されていること
常識的には、上記の業務起因性と業務遂行性のいずれをも満たす忘年会というのは、あまり多くないと思われます。逆に言えば、忘年会に参加中のケガが労災として認められるためのハードルは、相当に高いと考えられるでしょう。
いずれにしても、これから年末年始にかけては、プライベートも含めて、社員が普段とは異なる環境で活動する機会が増えます。
労災事故等の防止について、改めて注意を促しましょう。