最終更新日:2023年11月27日
従業員に賞与を支給した場合、健康保険と厚生年金保険の保険料を控除し、被保険者負担分と事業主負担分を合わせて納付しなければなりません。
以下、手続きの概要と注意点を確認していきます。
(1)保険料と保険料率
賞与から徴収する健康保険と厚生年金保険の保険料は、賞与にそれぞれの保険料率を乗じて計算し、被保険者と事業主が折半して負担します。
厚生年金保険の保険料率は、現在、18.3%(被保険者負担分は9.15%)で固定されています。
健康保険の保険料率は、会社が加入している健康保険ごとに異なります。さらに、介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満の加入者)については、介護保険料も控除する必要があります。
(2)「標準賞与額」をもとに保険料を計算
保険料計算のもととなる賞与額は、「標準賞与額」を用います。標準賞与額とは、税引き前の賞与の額面金額から1,000円未満の端数を切り捨てたものです。したがって、標準賞与額は1,000円単位の金額となります。
標準賞与額×保険料率(9.15%)=賞与から控除する保険料
標準賞与額には、下記のとおり上限が定められています。
・健康保険の上限は「573万円」
健康保険の標準賞与額の上限は、年度(4月~翌年3月)の累計額で、573万円です。
【計算例】
夏季賞与320万円、冬季賞与300万円で、年度合計では620万円
↓
年度の上限は573万円なので、47万円超過
(320万円+300万円)-573万円=47万円
↓
上限を超える47万円を冬季賞与の標準賞与額からカット
300万円-47万円=253万円
↓
冬季賞与の標準賞与額は253万円
この計算例では、健康保険の保険料の計算上は上限を超える47万円がカットされ、冬季賞与の標準賞与額は253万円となります。
・厚生年金保険の上限は「150万円」
厚生年金保険の標準賞与額の上限は、支給1回(同じ月に2回以上支給された場合は合算)につき、150万円です。
【計算例】
冬季賞与200万円
↓
1回の上限は150万円なので、50万円超過
200万円-150万円=50万円
↓
1回の上限を超える50万円を冬季賞与の標準賞与額からカット
200万円-50万円=150万円
↓
冬季賞与の標準賞与額は150万円
この計算例では、厚生年金保険の保険料の計算上は上限を超える50万円がカットされ、冬季賞与の標準賞与額は150万円となります。
(3)控除した保険料の納付事務
賞与を支給した場合には、支給日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」を年金事務所(事務センター)に提出します。
この届出内容により標準賞与額が決定され、賞与に係る保険料額も決まることになります。
賞与に対する健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者負担分と事業主負担分を合わせて、賞与を支給した月の翌月末日までに納めます。
したがって、12月に賞与を支給した場合は、毎月の保険料と合わせて、翌年の1月末日までに納付する必要があります。
納付方法は、「口座振替」「金融機関の窓口で納付」「電子納付」のいずれかによります。
なお、日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、いずれの被保険者・70歳以上被用者に対しても賞与を支給しなかった場合には、「賞与不支給報告書」を提出します。賞与不支給報告書を提出した場合、賞与支払届の提出は不要です。