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少額減価償却資産の処理方法の選択のポイント

2024年1月の経理豆知識

少額減価償却資産の処理方法の選択のポイント
最終更新日:2023年12月25日
事業のために用いられる建物や機械・装置、器具・備品などの減価償却資産は、取得時にその取得価額の全額が経費(損金)になるのではなく、その資産の使用可能期間(法定耐用年数)の全期間にわたって経費とされていきます。
以上が原則的な処理ですが、取得価額が30万円未満の少額な減価償却資産については、処理方法にいくつかの選択肢があります。
なお、法人と個人事業者で異なる取扱いとなる部分がありますので、以下は法人を前提に説明します。

(1)取得時に全額が経費になる資産とは

使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得価額の全額を事業の用に供した事業年度の必要経費とすることができます。

(2)一括償却資産とは

取得価額が20万円未満のものについては、その減価償却資産の全部または特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1を、その事業の用に供した事業年度以後3年間の各事業年度の必要経費とすることができます。この処理の対象となる資産を「一括償却資産」といいます。

(3)租税特別措置法の特例とは

一定の要件を満たす中小企業者が、2024年3月31日までに取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、その取得価額の全額を、その事業の用に供した事業年度の必要経費とすることができます。この即時償却制度が、租税特別措置法の特例です。
たとえば、在宅勤務用の30万円未満のテレワーク用設備(パソコンやソフトウェア)を導入する場合にも、全額を損金算入することが可能です。
ただし、適用を受ける事業年度における取得価額の合計額には、限度額が定められています。300万円を超えるときは、その取得価額の合計額のうち、300万円に達するまでが限度となります。

(4)取得価額別の処理の選択肢

少額の減価償却資産について、取得価額の区分ごとに選択できる処理方法をまとめると、次のようになります。
取得価額の区分 選択できる処理方法
10万円未満 ①取得時に全額を経費処理
②一括償却(3年間で償却)
③租税特別措置法の特例(即時償却)
④通常の減価償却
*②、③、④は選択が可能という意味で、通常は①により処理
10万円以上20万円未満 ①一括償却(3年間で償却)
②租税特別措置法の特例(即時償却)
③通常の減価償却
20万円以上30万円未満 ①租税特別措置法の特例(即時償却)
②通常の減価償却
これら取得価額の判定に際して、消費税の額を取得価額に含めるかどうかは、選択している経理方式によります。したがって、税込経理であれば消費税を含んだ金額で、税抜経理であれば消費税を含まない金額で判定します。
なお、2022年4月1日以降に取得した減価償却資産で、貸付けの用に供したもの(主要な業務として行なう貸付けに供するものを除きます)については、上記(1)の取得時に全額を経費処理、同(3)の租税特別措置法の特例の適用はありません。

(5)償却資産税の取扱い

償却資産税は、市町村が固定資産に対して課税する固定資産税です。
通常の減価償却が行なわれる資産と、租税特別措置法の特例を適用する30万円未満の資産は、償却資産税が課せられます。
一方、取得価額が10万円未満の資産(取得時に全額を経費処理)と、20万円未満の一括償却資産には、償却資産税が課税されません。
種別 償却資産税の課税・非課税
通常の減価償却資産 課税される
30万円未満の資産(租税特別措置法の特例を適用) 課税される
10万円未満の資産(取得時に全額を経費処理) 課税されない
20万円未満の一括償却資産 課税されない
償却資産税の取扱いも含めて、有利・不利の判断と処理方法の選択をする必要があります。