最終更新日:2023年12月25日
事業主は、労災事故を防止するため、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たさなければなりません。法違反がある場合、労災事故の発生の有無にかかわらず、刑事責任が問われることがあります。
ここでは、労災事故が発生した直後にスポットを当てて、基本的な対応を確認します。
なお、労災事故による死亡や休業が発生した場合には、労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出する必要がありますが、直後の対応とはいえないので、労働者死傷病報告については、
「労働者死傷病報告の提出と休業日数のカウント方法」を参照してください。
(1)被災労働者の救護・治療が最優先
まずは、被災労働者の救護・治療を最優先に考えなければなりません。落ち着いて行動することが重要です。
軽傷であれば、乗用車等で労災保険指定医療機関に搬送します。労災保険指定医療機関とは、指定を希望する医療機関からの申請に基づき、都道府県労働局長が指定した病院または診療所です。被災労働者は、診療、治療、療養の費用を支払うことなく、労災保険法で定められた療養補償給付を現物給付(医療行為)で受けることができます。最寄りの労災保険指定医療機関の連絡先、場所等をチェックしておきましょう。
労災保険指定医療機関以外で治療を受けた場合は、いったん治療費を負担する必要がありますが、別途請求により負担した費用が労災保険から支給されます。
当然のことですが、重傷の場合は、迷わず救急車の出動を要請しましょう。救急車を呼ぶような重傷の事故では、被災労働者の家族にも速やかに連絡をするようにします。
(2)重大災害の場合は警察等にも通報
重大災害が発生した場合は、適宜、警察へ通報するとともに、所轄の労働基準監督署にも連絡して、今後の対処方法などを確認します。
また、重大災害では、警察や労働基準監督署の現場検証まで、災害発生現場の保存に努めなければなりません。ただし、二次災害の恐れがある場合は、危険物の除去など、その防止を第一に考えて対処します。
あわせて、事故の現場を見た従業員等から事情を聴取し、事故の状況を正確に記録しておくことも重要です。
(3)その他の留意点
万一の場合に備えて、日頃から応急手当や救護のために必要な物品を準備し、置き場所の確認、定期的なメンテナンスなどをしておきましょう。
また、消防や救急、警察署等に対応する担当責任者も決めておくと、緊急時の対応がスムーズになります。
以上をふまえて、労災事故が発生した場合の基本的な対応例を示すと、次のとおりです。
現場対応
●被災者の救護
●被災者の病院への搬送
●警察・労働基準監督署への連絡
(重大な労災事故の場合)
●被災者の家族への連絡
↓
状況把握・調査
●警察・労働基準監督署の現場検証立会い
●警察・労働基準監督署の事情聴取への対応
↓
再発防止策の
検討と実施
●設備や道具の改善
●作業手順書の改訂
●社内安全衛生教育の実施