最終更新日:2024年1月29日
労働安全衛生法は、事業者に対し、医師による労働者の健康診断の実施を義務づけています(第66条1項)。一方、労働者には、事業者が実施する健康診断を受診する義務が課せられています(第66条5項)。
事業主が実施する健康診断には、大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。
「雇入れ時健康診断」は一般健康診断に分類され、労働安全衛生規則第43条に基づき行なわれます。雇入れ時健康診断の目的は、労働者を適正に配置するとともに、入社後の健康管理の基礎資料とすることにあります。
(1)雇入れ時健康診断の対象者
雇入れ時健康診断は、事業場の規模や業種に関係なく、常時使用する労働者を雇い入れる際に行なう必要があります。
「常時使用する労働者」には、パートタイマーなど非正規労働者も含まれます。具体的には、1年以上継続勤務しているか継続して勤務することが見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間がその事業場の同種業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であれば、雇入れ時健康診断の対象となります。
なお、1週間の所定労働時間が同種業務に従事する通常の労働者の4分の3未満であっても、概ね2分の1以上である場合は、実施することが望ましいとされています。
(2)雇入れ時健康診断の検査項目
雇入れ時健康診断の検査項目は、次のとおりです。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖、蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
(3)診断項目の省略
定期健康診断項目については、一部、過去の健診結果、自覚症状や他覚症状の有無などを参考に医師の判断により省略できますが、雇入れ時健康診断について項目を省略することは認められていません。
ただし、採用前3か月以内に医師による健康診断を受診している場合には、その結果を証明する書類を会社に提出すれば、重複項目に限り省略することができます。
(4)診断結果の通知と保存
雇入れ時健康診断の結果については、対象労働者に通知するとともに、「健康診断個人票」(様式第5号)に記録し、5年間保存する必要があります。