最終更新日:2024年1月29日
決算期末には、製商品等の在庫数や品質の状況等を確認する「棚卸」を実施する必要があります。
ここでは、棚卸に関して知っておきたい基礎知識を紹介します。
(1)棚卸を行なう目的
製商品等の在庫は、紛失、陳腐化、破損といった事態が発生すれば、本来の役割を果たさなくなります。その実際の状況を確かめるために行なうのが棚卸ということになります。取り扱う製商品等の数が多い会社などは、棚卸に多大な時間と労力を費やさなければなりませんが、この業務をおろそかにすることはできません。
もうひとつ、棚卸には重要な役割があります。それは、会社の利益を正確に把握することです。損益計算において売上原価を正しく計算するためには、期首と期末の正確な棚卸高を算出する必要があります。
また、滞留している在庫を把握することも目的として挙げられます。滞留在庫を把握することで、仕入れを改善したり、早めに処分(安値販売、廃棄など)をしたりするなど、経営判断に役立てることができます。
さらには、棚卸には不正の防止という目的もあります。在庫はさまざまな「操作」に悪用されることが少なくありません。たとえば、在庫を水増しして利益を過大に見せたり、関係者が商品の横流しをしたり、という事態も発生しています。棚卸には、こうした不正行為を防止する機能もあります。
棚卸の目的・役割
①製商品等の状況の確認
②会社利益の正確な把握
③滞留在庫の把握
④不正行為の防止
(2)帳簿棚卸と実地棚卸の関係
棚卸の方法には、大きく分けて「帳簿棚卸」と「実地棚卸」の2種類があります。
帳簿棚卸とは、帳簿に棚卸資産の受払いを記録し、帳簿上で在庫を計算・把握するものです。帳簿棚卸のメリットは、時間や人的なコストを抑えつつ、在庫をある程度正確に把握できることです。一方で、どうしても記入漏れや記入ミスなどが発生し、その結果、帳簿上の在庫と実際の在庫に差異が生じます。
実施棚卸とは、実際に現物を点検・計量するものです。実際に確認するので正確ですが、非常に手間と時間のかかる作業であるため、日常的に行なうことは困難です。
そこで、両者のメリットとデメリット、費用対効果を考えて、ふだんは帳簿棚卸により管理しますが、決算期末などに実地棚卸を行なって、帳簿上の在庫と実際の在庫を照合し、差異の修正等を図ることになります。
(3)実地棚卸の手続きの流れ
業種や取り扱い製商品等の種類、その他の個別事情により実地棚卸のやり方は異なりますが、卸・小売業の場合の最も一般的な手続きの流れを示すと、以下のとおりです。
1.実地棚卸表(票)の作成
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「商品名」「個数」「単価」「金額(個数×単価)」などが記入できる棚卸表(票)を作成します。
2.実地棚卸の実施
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倉庫などにある在庫を実際にカウントします。
3.実在庫と帳簿在庫との照合
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現物と帳簿上の在庫とを比較します。実地棚卸の結果と帳簿在庫は、本来一致しなければなりませんから、在庫数量の差異がある場合は、その原因を調査します。
4.帳簿の修正(必要に応じて)
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差異の原因を究明したうえで、最終的には帳簿上の数字を修正します。
5.棚卸表(票)と関連資料の保存
税務調査等に備えて、棚卸表(票)とともに、実地棚卸が行なわれたことを示す関連資料(作業計画表、分担表、スナップ写真等)を保存しておきます。
なお、法人税法上は、棚卸資産について各事業年度終了の時に実地棚卸をしなければなりません。
ただし、実地棚卸に代えて、部分計画棚卸等の合理的な方法により期末の棚卸高等を算定している場合には、継続適用を条件としてこれが認められます(法人税基本通達5-4-1)。