最終更新日:2024年3月26日
会社が従業員の給与の一部を預かり、貯蓄を行なう仕組みを「社内預金」といいます。一般に社内預金は、従業員の福利厚生施策の一環とされ、制度を導入するか否かは各企業の任意です。
労働基準法第18条第1項では、「使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。」として、労働者の賃金の全部または一部を強制的に貯蓄させること(いわゆる強制貯金)を禁止しています。
その一方で、一定の条件のもと、労働者の委託を受けて、使用者が労働者の貯蓄金を社内預金として管理することを認めています。
社内預金として貯蓄された資金は、会社の運転資金等として活用することができます。ただし、原資はあくまでも労働者の賃金であるため、預金の安全性の確保が最優先の課題とされています。
(1)社内預金制度の実施・運用上の留意点
社内預金制度の実施・運用にあたっては、次のような点に留意する必要があります。
項目 |
内容 |
労使協定の締結・届出 |
新たに社内預金制度を実施する場合や制度を変更する場合には、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。 |
社内預金規程の作成と周知 |
社内預金の管理に関する規程を定め、作業場に備え付ける等の方法により労働者に周知しなければなりません。 |
速やかな返還 |
労働者から社内預金の返還を請求された場合には、遅滞なく返還しなければなりません。 |
保全措置 |
毎年3月31日現在の受入れ預金額の全額について、その後1年間を通じて保全措置を講じなければなりません。保全措置としては、「金融機関等による保証契約」「信託会社との信託契約」などがあります。 |
預金管理状況報告 |
毎年3月31日以前1年間の預金管理状況を4月30日までに所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。 |
(2)社内預金の利率
会社が従業員から社内預金を受け入れる場合には、厚生労働省が定める利率(下限利率)以上の利子を付けなければなりません。
下限利率を下回る利率を労使協定で定めても無効となり、下限利率を付けたものとみなされます。
なお、社内預金の下限利率は、市中金利の実勢を考慮して見直しが行なわれます。
参考までに、現在の下限利率は、「年5厘(0.5%)」とされています。
(3)社内預金のメリット・デメリット
社内預金の下限利率は、現在の定期預金の市中金利と比べると高い水準です。
そのため、単純に利率の面から考えれば、社内預金制度は従業員にとって魅力的な福利厚生といえるでしょう。
とはいえ、社内預金はあくまでも従業員が会社にお金を預けている(貸している)状態です。銀行預金等とは、リスクの程度や性質が異なることに注意が必要です。
一方、会社側にとっては、社内預金を事業資金として活用できる点はメリットですが、厳格な保全措置を講じる必要があること、下限利率以上の利息を支払わなければならないこと、労使協定の締結や預金の受入れ・返還等の事務負担が生じる点などはデメリットといえます。