最終更新日:2024年3月26日
厚生労働省によると、2024年3月大学等卒業予定者の就職内定率(2月1日現在)は91.6%と、前年同期を0.7ポイント上回っています。
少子高齢化でますます人手不足が深刻化するなか、採用に積極的な企業が多い状況です。
以下では、試用期間と解雇の問題について考えてみます。
(1)試用期間とは
試用期間とは、労働者を本採用する前の試験的な雇用期間をいいます。企業としては、この期間中に、当該労働者の適性や能力、勤務態度等を見極めて、正社員として本採用するか否かを判断・決定することになります。
試用期間の長さに法律上の定めはなく、また試用期間自体を設けるか否かも企業の任意です。試用期間を設ける場合には、3か月程度の期間としている企業が多いようです。
(2)試用期間の法的な意味
試用期間は、「解約権留保付の労働契約」であると考えられています。つまり、労働契約の締結と同時に雇用関係は生じるものの、対象従業員に不適格事由があれば、留保していた解約権を行使して解雇できる労働契約ということです。
試用期間中は、その趣旨・目的に照らして、通常の正社員よりも広い範囲で企業に解雇の自由が認められるといえます。
ただし、労働契約自体は成立しているので、試用期間中といえども安易に解雇することは許されません。
(3)試用期間中の解雇の手続き
●試用期間の開始(採用)から14日以内に解雇する場合
労働基準法第20条は、「労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をするか、30日前に予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。予告日数は、1日について平均賃金を支払った場合には、その日数を短縮することができる。」としています。
試用期間の開始から14日以内に解雇する場合は、この労働基準法上の解雇の手続きを経ずに解雇(即時解雇)することが可能です。
とはいえ、14日以内であっても、解雇が無条件に認められるわけではありません。解雇に客観的、合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要です。
●試用期間の開始(採用)から15日目以降に解雇する場合
試用期間中であっても、試用期間の開始から14日を超えて勤務した場合には、労働基準法上の解雇の手続きが必要です。
つまり、解雇の予告をするか、解雇の予告をしない場合は解雇予告手当を支払う必要があります。
試用期間中の解雇の扱い
試用期間の開始(採用)
↓
即時解雇が可能
(ただし、解雇に客観的、合理的な理由があり、社会通念上相当であることが前提)
14日目まで
15日目以降
↓
通常の解雇手続き(労働基準法第20条)が必要
(解雇予告もしくは解雇予告手当の支払い)
試用期間の終了
(4)解雇予告除外認定の取扱い
「労働者の責に帰すべき事由」に基づいて解雇する場合には、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることにより、解雇予告または解雇予告手当の支払いが不要になります。
労働者の責に帰すべき事由としては、たとえば次のようなものが挙げられます。
- 事業場内において窃盗、横領、傷害等の行為を行なった場合
- 賭博などにより職場規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
- 雇入れの際に重大な経歴の詐称があった場合
- 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促にも応じない場合
なお、労働者の責に帰すべき事由であるか否かは、対象労働者の地位や職位、勤務状況等の要素を考慮したうえで、労働基準監督署長が総合的に判断します。したがって、実際の判断はケースバイケースであることに注意が必要です。