最終更新日:2024年3月26日
日本では、多くの会社が3月末決算です。そのため、3月末決算の会社の経理部門は、これから決算作業、税の申告・納付と、繁忙期を迎えることになります。
以下では、決算作業で必須の「決算整理」について説明します。
(1)決算整理とは
決算整理とは、ごく簡単に言えば、年(度)をまたぐ取引について、当年(度)分と翌年(度)以降の分に整理する作業です。
すべての取引が現金主義で、販売(納品)等と同時に現金を受け取る、仕入(購入)等と同時に現金で支払うということであれば、基本的に決算整理の手続きは必要ありません。
しかしながら、売上や仕入と入金や支払いのタイミングがずれている取引があったり、先払いしている費用、逆に前受けしている収入があったりするなど、実際にはいろいろな取引があります。
決算書の作成にあたっては、期中に作成した総勘定元帳がベースになります。上記のように多様な取引があることから、総勘定元帳の各残高が、そのまま正しい期末の資産・負債や当期の収益・費用の金額を示しているとは限りません。
そのため、資産・負債・収益・費用の金額を修正する手続きである決算整理が必要となるのです。これにより、会社の実態を正しく表わす決算書を作成することができます。
特に1年(度)の取引数が多い企業の場合、決算にあたって多くの決算整理が必要になるため、相当の手間とコストがかかります。
(2)決算整理と前払費用
前払費用は、支払家賃・地代、支払利息、保険料などのように、「期間」を対象として支払われる経費について、未経過期間に対応する部分を処理する勘定科目です。前払費用は、原則として支出時には資産に計上し、役務(サービス)の提供を受けたときに損金の額に算入します。
決算整理について、前払費用である保険料を例に、具体的に説明しましょう。
3月末決算の企業が、当期に2月1日~翌年1月31日までの1年分の保険料36万円を前払いした場合、当期の決算で費用になるのは2月分と3月分の計6万円です。したがって、当期の3月末時点では、10か月分の30万円が前払費用(来期に損金算入)となります。
何も処理をしないと、当期の費用が正しく計上されないので、こうした決算整理が必要になるというわけです。
なお、法人税法では、前払費用のうち、1年以内の短期前払費用については、継続処理を条件として、その支払った事業年度に費用処理することが認められています(短期の前払費用の特例)。
したがって、上記の保険料のケースでは、継続処理を条件として、決算時に前払費用として処理をせずに、支払額の全額を経費にすることも可能です。
(3)決算整理事項の例
決算整理が必要になる事項は数多くあります。下表に代表的なものをまとめましたので、参考にしてください。
項目 |
内容 |
仮勘定の整理 |
正式な処理の前に、一時的に使われる勘定。取引は発生したものの、その時点では計上すべき勘定科目が判明しない場合や金額が不明な場合などに使われる。「仮受金勘定」「仮払金勘定」などがある。 |
経過勘定の処理 |
時間の経過に従って生じる費用・収益を調整するための勘定で、発生した期間に正しく配賦する(割り当てる)。「前払費用」「前受収益」「未払費用」「未収収益」の4つの経過勘定がある。 |
貸倒損失の計上 |
金銭債権(売掛金、受取手形など)について、次のような事実が生じた場合には、貸倒損失として損金の額に算入することができる。
- 金銭債権が切り捨てられた場合
- 金銭債権の全額が回収不能となった場合
- 取引停止後に一定期間弁済がない場合等
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貸倒引当金の計上 |
金銭債権について、将来回収不能と見込まれる金額を計算し、貸倒れに備えて準備しておく引当金。貸倒引当金として計上する金額も損金の額に算入することができる。 |
長期前払費用の前払費用への振替 |
長期前払費用とは、前払費用のうち、決算から1年を超える期間を経て費用となるもの。言い換えると、前払い期間が1年を超えている場合の、その1年を超えている部分の金額。決算後1年以内に費用となる分について、長期前払費用から前払費用への振替を行なう。 |