• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

クーリング・オフ制度について企業が押さえておきたい留意点

2024年5月の総務豆知識

クーリング・オフ制度について企業が押さえておきたい留意点
最終更新日:2024年4月26日
クーリング・オフ(Cooling-off)とは、直接的には「頭を冷やす」という意味で、一定期間内であれば、無条件で、一方的に契約を解除することができる制度です。
特定商取引法(訪販・直販等、特定の商取引に関する法律)や関連の法律に定められた消費者を守るための制度であり、訪問販売や電話勧誘販売等、主に不意打ち的な取引が対象とされています。
クーリング・オフをすると、契約は初めからなかったことになります。当然、代金の支払義務もなくなり、すでに代金を支払っていた場合は返金されます。
消費者がすでに商品もしくは権利を受け取っている場合には、業者の負担によって、その商品を引き取ってもらうことや権利を返還することができます。
また、すでに役務(サービス)が提供されている場合でも、消費者は代金を支払う必要がありません。

(1)クーリング・オフできる取引と期間

どのような取引を行なうかによって、クーリング・オフできる期間が異なります。主な対象取引の詳細は下表のとおりです。
これらのほか、生命保険・損害保険や宅地・建物の契約等においても、クーリング・オフが可能な取引があります。
取引の種類 クーリング・オフ期間(原則として、法定の契約書面を受け取った日から起算)
訪問販売
(キャッチセールス、アポイントメントセールス等を含む)
8日間
電話勧誘販売 8日間
特定継続的役務提供
(役務提供期間が1か月または2か月を超える5万円超の取引)
①エステティック
②美容医療
③語学教室
④学習塾
⑤家庭教師
⑥パソコン教室
⑦結婚相手紹介サービス
8日間
連鎖販売取引
(いわゆるマルチ商法)
20日間
訪問購入
(業者が消費者の自宅等を訪ねて商品の買い取りを行なうもの)
8日間

*訪問購入の場合、クーリング・オフ期間内は、消費者(売主)は業者に対して売却商品の引き渡しを拒むことができる。

業務提供誘引販売取引
(内職商法、モニター商法等)
20日間
ただし、表中の取引・販売方法であっても、条件によってはクーリング・オフの対象にならないことがあります。
クーリング・オフができる取引かどうかが不明な場合は、消費生活センター等に確認する必要があります。
なお、契約書を受け取っていない場合や、契約書の記載内容に不備がある場合は、上記の期間を過ぎてもクーリング・オフが可能です。また、「クーリング・オフはできない」など、虚偽の説明を受けた場合も同様です。

(2)クーリング・オフについての企業側の留意点

クーリング・オフは、消費者にとっては自身を守ってくれる心強い制度ですが、販売する企業の側からすれば、なるべく主張(権利行使)されたくないものでしょう。
対策としては、クーリング・オフの対象になる取引とならない取引の区分、クーリング・オフの対象となる取引につき、どのような点に注意して契約を締結すべきか等について、十分に理解しておく必要があります。
たとえば、店舗での購入や、カタログやインターネット広告を見て申し込む通信販売などは、消費者が自らの意思で考えて購入することができるので、クーリング・オフの対象にはなりません。
電話勧誘販売では、過去1年以内に販売業者等と2回以上の取引があった顧客に対する販売は、クーリング・オフの対象外です。
また、訪問販売であっても、事業者同士が営業のために行なう取引であれば、クーリング・オフは適用されません。一般の消費者のように、判断を誤る恐れは低いと考えられるからです。
販売機会を逃さないため、また契約解除のリスクを避けるためにも、企業としては、クーリング・オフの適用と適用除外、その効果、制約等を見極めておくことが重要になるでしょう。

(3)法改正に伴うクーリング・オフ関係の変更点

法改正に伴う最近のクーリング・オフ関係の変更点を確認しておきましょう。

① クーリング・オフ通知の電子化
従来、消費者からのクーリング・オフの通知は書面(はがき等)で行なう必要がありましたが、2022年6月1日からは、消費者からのクーリング・オフの通知について、電磁的方法(電子メールの送付等)で行なうことが可能になりました。

② 契約書面等の交付の電子化
2023年6月1日より、事業者が交付しなければならない契約書面等について、消費者の承諾を得て、電磁的方法(電子メールの送付等)で行なうことが可能になりました。