最終更新日:2024年4月26日
株式会社は、毎事業年度の終了後一定の時期に、定時株主総会を開催しなければなりません(会社法296条1項)。
定時株主総会は、通常、事業年度の末日を基準日とし、その日から2か月もしくは3か月以内に開催されます。そのため、3月決算の株式会社では、通常、5月もしくは6月に定時株主総会を開催します。
(1)定時株主総会当日までの流れ
事業年度の末日から、定時株主総会当日までのおおまかな流れは次のとおりです。
事業年度の末日(基準日)
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計算書類の作成
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監査役に対する計算書類の提出
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監査役による監査報告書の提出
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決算取締役会
(①計算書類の承認)
(②株主総会招集の決定)
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株主総会招集通知の発送
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定時株主総会の開催(当日)
(2)定時株主総会の簡略化・効率化
定時株主総会は、株式会社であれば毎年必ず開催しなければならず、例年同じやり方をしている会社が多いと思われますが、まだまだ改善の余地はあるはずです。
以下、定時株主総会に関連する手続き等の簡略化・効率化という観点から、ポイントをみていきましょう。
①口頭・電話、電磁的方法による招集通知
株主総会の招集にあたっては、取締役会設置会社(取締役会を置く株式会社)は、原則として、書面により招集通知を行なう必要があります。ただし、事前に株主の承諾があれば、書面に代えて電磁的方法により行なうことも可能です。具体的には、電子メールやWebサイトからダウンロードする方法により、招集通知を発することができます。
これに対して、非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)で、かつ、取締役会非設置会社(取締役会を置かない会社)では、書面によらず、口頭や電話での招集通知も可能です。口頭や電話で行なう場合であっても、後々のトラブルを防止するため、同じ内容を電子メール等で送っておくとよいでしょう。
なお、株主全員の同意がある場合には、招集の手続きを経ることなく、株主総会を開催することができます。つまり、招集手続き自体の省略が可能になります。
以上、株主総会の招集通知の効率化・省力化には、いろいろな方法があります。自社の状況をふまえて、適した方策を検討するとよいでしょう。
②議事進行に関するシナリオの作成
定時株主総会の当日、株主総会を円滑に、かつ、法的な要件を満たして進行させるためには、事前に議事進行に関する「シナリオ」を作成しておくことが大切です。
場合によっては、あらかじめ関係株主から意見や要望、質問内容等を聴取し、シナリオに反映させることも考えられます。
あらゆる事態を想定して、事前にシナリオをきちんと作成しておけば、不測の事態が生じるリスクが減り、株主との質疑応答に集中することが可能になります。
③株主との想定問答の作成
取締役、会計参与、監査役、執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。
この説明義務に違反して十分な説明をしなかったと判断されると、最悪の場合、株主総会の決議自体が取り消される可能性があります。
一定の場合には、説明を拒否することも可能ですが、その場面は非常に限られています。基本的には、誠実に対応するスタンスが不可欠です。
説明義務違反に問われないため、また質疑応答をスムーズにこなすためにも、株主から質問が想定される事項については、事前に想定問答を作成しておきましょう。
④株主総会資料の電子提供制度の利用
株主総会資料の電子提供制度は、株主総会資料を自社のホームページ等に掲載し、株主に対しては、そのアドレス等を書面により通知することによって、株主総会資料を提供する制度です。
上場会社は、2023年3月1日以降に開催される株主総会から電子提供制度の利用が義務となっていますが、中小企業(非上場会社)においては、定款に定めることで、株主総会資料の電子提供制度を利用することができます。
なお、書面での資料提供を希望する株主は、「書面交付請求」をすることにより、書面で受け取ることができます。