最終更新日:2024年5月30日
「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」が取りまとめた大学生の新卒採用スケジュールによると、原則として、2025年度入社者については、3月1日以降に広報活動開始、6月1日以降に採用選考活動開始、10月1日以降に正式内定の解禁となっています(2026年度入社者についても、同様のスケジュールが示されています)。
6月の採用選考活動開始に際し、「内定」についてあらためて確認してみましょう。
(1)「内定」とは
内定とは、法的には、「始期付解約権留保付労働契約」といわれる労働契約の一形態です。
この労働契約には、文字どおり「始期」と「解約権留保」という2つの条件が付いています。
「始期付」とは、実際に入社して就業を開始する日を労働条件に付加するものです。たとえば、新卒の学生であれば、4月1日を就業開始日とします。
「解約権留保付」とは、就業開始日までの間、会社(使用者)は内定者との労働契約を解約できる権利を付加するものです。内定を取り消す権利(解約権)を会社側が留保している労働契約です。
内定は、以上のような2つの条件は付いているものの、会社と内定者との間で労働契約自体は成立し、双方に法的な拘束力が生まれます。
その結果、内定後に会社・内定者のどちらかが一方的に労働契約を解約しようとすると問題が生じます。内定者側からの労働契約の解約が「内定辞退」、会社側からの解約が「内定取消」ということになります。
(2)「内々定」とは
内々定については、内定とほとんど同じ意味合いで使われることも少なくありませんが、内定とは異なり、法的には労働契約に至っていない状態です。
労働契約自体が成立していないため、基本的には会社から一方的に内々定を取り消すことも可能です。内定者からの損害賠償請求等も原則として認められません。
ただし、内々定の実態が内定と同視できるものであれば、労働契約が成立しているものとみなされます。この場合、内々定であっても一方的に取り消すことはできません。
(3)内定取消の手続き
正当な理由もなく内定を取り消した場合には、その内定取消は無効となります。
内定取消が認められるのは、採用内定当時には知ることができない重大な事実が判明したり、卒業が条件だったのに卒業できなかったりしたなど、内定取消を行なうことが「社会通念上相当」であると認められる場合です。
ただし、社会通念上相当と認められる理由がある場合でも、条件付とはいえ、いったん成立した労働契約を解除するわけですから、採用内定の取消は原則として解雇と同様に考えなければなりません。
そのため、解雇と同様に、少なくとも30日前に内定取消(労働契約の解除)の予告を行なうか、予告しない場合には解雇予告手当の支払いが必要になります。
そのうえで、後々、訴訟問題(損害賠償を請求される、従業員としての地位を求められるなど)が起こらないよう、内定者に対して十分に取消に至った事情を説明し、新しい就職先の紹介に努めるなど、内定者に与える不利益を最小限に抑えるようにすることが大切です。
(4)内定辞退について
内定辞退の取扱いについては、民法の規定に基づくことになります。
民法627条1項では、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と定めています。
したがって、内定者からすれば、内定辞退の申入れから2週間が経過すれば、辞退が成立することになります。