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役員報酬の税務上の取扱いと変更の手続き

2024年6月の経理豆知識

役員報酬の税務上の取扱いと変更の手続き
最終更新日:2024年5月30日
役員報酬は、会社の定款に規定があればそれに従い、定款の規定がなければ株主総会の決議によって定めます。
役員報酬を役員自身で自由に決めると、いわゆる“お手盛り”で不相当に高額な報酬とするおそれがあるからです。
ここでは、株主総会で役員報酬を定める会社を前提として、役員報酬の変更手続きを解説します。

(1)役員報酬の税務上の取扱い

まず、役員報酬の税務上の取扱いを確認しておきましょう。税務上、次の役員報酬が損金の額に算入されます。
1.定期同額給与 定期同額給与は、給与の支給期間が1か月以下の単位で、支給金額が同一事業年度内で同額であるものをいいます。
ただし、同一事業年度内に給与額を改定した場合でも、期首から3か月以内に改定する「通常改定」や、やむを得ない事情が生じた場合の「臨時改定」等については、定期同額給与に準じるものとして取り扱われます。
2.事前確定届出給与 事前確定届出給与は、支給時期や金額を事前に定めて、その内容に基づいて支給する給与のことです。
事前確定届出給与については、株主総会等の決議日から1か月以内に、支給時期や支給額等を記載した届出書を税務署に提出する必要があります。
3.業績連動給与 業績連動給与は、利益や株価等の指標を基礎にして算定する給与です。
法人(同族会社にあっては、非同族会社との間に当該法人による完全支配関係があるものに限ります)が業務執行役員に対して支給する給与で、一定の要件を満たすものが該当します。
以下では、このうち定期同額給与の変更手続きをみていきます。

(2)役員報酬変更の手続き

定期同額給与は、以下の要領で変更手続きを行ないます。
事業年度開始の日から3か月以内に変更する場合 株主総会で役員報酬の変更が決議されたら、その決議内容を株主総会議事録に記載します。
定期同額給与の変更については、税務署等への届出は必要ないため、変更手続きはこれで終了です。
年度の途中で変更する場合 年度の途中で変更する場合も、手続き自体は事業年度開始の日から3か月以内に変更する場合と同じです。報酬変更の決議内容を株主総会議事録に記載します。
定時株主総会ではなく臨時株主総会で決議するという点が異なります。
役員の個別の報酬額を株主総会で決定せず、総額の上限のみを定め、個々の役員への配分を取締役会の決定に委ねることも可能です。
株主総会の決議による委任を受けた取締役会では、総額の上限の枠内において各役員への報酬の配分を決定します。
さらに、取締役会の決議によって各役員への報酬の配分を代表取締役に一任することも可能です。
なお、役員報酬の変更に伴い、社会保険の手続き(健康保険料と厚生年金保険料の改定手続き)が必要になることがあります。

(3)過大な役員報酬の損金不算入

手続き上の要件を満たしていても、不相当に高額な部分の金額は、過大役員報酬として損金とはなりません。
過大か否かについては、次の2つの判定基準があります。
1.実質基準 役員の職務内容、法人の収益、使用人に対する給与の支給状況、類似した業種や規模の法人の役員報酬の支給状況などを総合的に勘案して判断されます。
2.形式基準 定款の規定や株主総会等の決議によって定められている額が支給限度額となり、それを超える部分が過大役員報酬となります。
この実質基準と形式基準を満たす役員報酬が、適正額として損金になります。