最終更新日:2024年6月28日
社会保険事務の担当者は、毎年、7月1日~10日の間に「被保険者報酬月額算定基礎届/70歳以上被用者算定基礎届」の提出事務を行ないますが、この時期は、随時改定と重なるケースがあります。
そうした場合の取扱いについて、あらためて確認しておきましょう。
(1)標準報酬月額と定時決定
社会保険では、従業員(社会保険の被保険者)が受け取る給与(通勤手当等の各種手当や、社宅・寮や食事等の現物給与の額も含みます)に応じて決定した「標準報酬月額」を保険料の計算に用います。
現在の標準報酬の等級と月額は、次のとおりです。
健康保険 |
1等級(58,000円)~50等級(1,390,000円) |
厚生年金保険 |
1等級(88,000円)~32等級(650,000円) |
標準報酬月額は、毎年9月に、4月~6月までの3か月の報酬月額に基づいて改定されます。これを「定時決定」といいます。
定時決定は、従業員の実際の給与と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、言い換えると、受け取る給与と支払う保険料のバランスをとるために行なう手続きです。
定時決定により算定された標準報酬月額は、原則として、9月から翌年8月分までの保険料の計算に適用されます。
(2)随時改定とは
従業員の給与が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変動したときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを「随時改定」といいます。
定時決定は1年に1回ですから、何もしないと翌年9月の定時決定による改定まで標準報酬月額は変更されません。随時改定は、定時決定にかかわらず、臨時的に実際の給与と標準報酬月額との差を調整する手続きです。
随時改定は、次の3つの条件を満たす場合に実施することになっています。
- 昇給または降給等により固定的賃金に変動があったこと
- 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと
- 3か月とも賃金の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること
随時改定に該当する場合には、速やかに
「被保険者報酬月額変更届/70歳以上被用者月額変更届」を提出することにより手続きを行ないます。
(3)定時決定と随時改定が重なる場合の取扱い
定時決定と随時改定の時期が重なると、どちらの手続きによるのが正しいのか迷うことがあります。
次の場合には、随時改定が優先されます。
・4月に固定的賃金の変動があって、7月に随時改定に該当する人
・5月に固定的賃金の変動があって、8月に随時改定に該当する見込みの人
・6月に固定的賃金の変動があって、9月に随時改定に該当する見込みの人
たとえば、4月に昇給があって、(2)の3条件を満たし、随時改定の手続きを行なえば、7月から随時改定に基づく新たな標準報酬月額が適用され、翌年8月まで適用されます。この場合、9月の定時決定の対象とはなりません。
同様に、5月昇給であれば8月から、6月昇給であれば9月から、随時改定に基づく標準報酬月額が適用されます。
該当者については、算定基礎届の報酬月額欄には記入せず(空欄として)、備考欄の「3.月額変更予定」に○を付して提出します。電子媒体申請・電子申請の場合は、該当者の分を除いて作成・提出することになります。