最終更新日:2024年7月29日
コロナ禍を機に、一気に導入企業が増えたテレワークですが、東京都が行なった都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率調査(2024年3月)によると、テレワーク実施率は43.4%でした。コロナ禍にあって、ピーク時の実施率は65.0%に達しましたが、このところ実施率は横這いの傾向にあります。
テレワークについては、従来から情報セキュリティの懸念や社内コミュニケーションの難しさなどが指摘されていて、テレワークから出社に切り替えた企業も少なくないようです。
以下、テレワークのメリット等について、あらためて確認しておきましょう。
(1)テレワークとは
テレワークは、一般に「ICT(情報通信技術)を活用して、時間や場所にとらわれずに柔軟に働くこと」と定義されます。
テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」の3形態があります。
形態 |
勤務場所 |
1.在宅勤務 |
会社(オフィス)には出勤せず、自宅を就業場所とする。 |
2.モバイルワーク |
移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場所とする。 |
3.サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)
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会社(オフィス)以外の遠隔勤務用の施設・スペースなどを就業場所とする。 |
(2)テレワークの効果(メリット)と留意点
テレワークの企業側・従業員側の一般的な効果(メリット)としては、次のようなものがあります。
企業側の効果(メリット) |
従業員側の効果(メリット) |
・人材の確保・育成、流出の防止
・仕事の進め方等の見直しによる業務プロセスの改善
・通勤費や出張費、オフィスコストなど、事業運営コストの削減
・自然災害発生時の事業継続性の確保
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・通勤時間の削減、通勤に伴う肉体的・精神的負担の減少
・仕事と介護や育児との両立(ワーク・ライフ・バランスの向上)
・生産性・創造性の向上
・仕事に対する満足度や就業意欲の向上
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ただし、これらの効果(メリット)の多くは、実はデメリットと表裏一体の関係にあることに注意しなければなりません。
たとえば、テレワークは従業員の裁量で柔軟に働くことができますが、その分、厳しい自己管理が求められます。また、上司や同僚社員とのコミュニケーション不足や孤立を招く懸念などもあります。
会社側としても、テレワーク特有のセキュリティ管理が必要ですし、従業員の労働実態の把握も常に課題となります。
(3)テレワークの導入・運用のポイント
テレワークを行なう労働者に対しても、通常の労働者と同様に、労働基準法、労働安全衛生法等の労働関係の諸法令が適用されます。これら諸法令を遵守したうえで、テレワークを導入・運用する必要があります。
以下、いくつか重要なポイントを紹介しましょう。
①対象部門・対象者の整理・選定
自社のすべての業務が、テレワークの対象として適しているとは限りません。たとえば、工場の製造ラインや接客・サービス業務などは、テレワークに適していません。
したがって、テレワークを導入する前提として、まず自社の業務をテレワークに「適している業務」と「適していない業務」に適切に整理・分類することが大切です。
そのうえで、テレワークの対象者も十分に検討しましょう。全社員を一律にテレワークの対象としない場合には、対象の基準を明確にしておく必要があります。
②労働時間制度・労働時間
テレワークでも、フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働制など、さまざまな労働時間制度を導入することが可能です。
また、労働時間については通常勤務と同様に管理する必要がありますから、適切な取扱いが求められます。
③時間外労働・休日労働
テレワークは従業員が離れた場所で働くため、実務上、時間外労働・休日労働についてトラブルになりやすい傾向があります。
時間外労働・休日労働は、事前許可制・事後報告制等に基づき、厳格な管理・運用を行なうようにしましょう。
④安全配慮義務
企業には、労働者が安全かつ健康に働くことができるように安全配慮義務が課せられています。
テレワークの場合、どうしても企業と従業員との間に物理的な距離ができるので、企業の安全配慮義務の履行が疎かになりがちです。
長時間労働の防止、健康診断、長時間労働者への面接指導、ストレスチェックなど、必要な措置・配慮を確実に実施しましょう。
テレワークに対してはさまざまな評価がありますが、一定のメリットがあることは事実です。
テレワークの運用にあたっては、自社のテレワークの目的や実施方法を適宜チェックし、問題点などを把握したら速やかに改善を図るようにしましょう。